冒険記録日誌
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2021年06月16日(水) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その15 |
目を覚ますともはや目慣れた船の上だ。もう夕日も沈む時刻らしく、空に星がいくつか瞬いておった。しかし、げぇむおーばーを迎えたい以上、3巻の冒険の最初の地点まで戻されたことは間違いなかった。それは確信があった。 なぜなら例によってあの忌々しい使者の神ヘルメスが拙者の傍に立ち、ニヤニヤ笑いを浮かべているのが見えたからじゃ。 「惜しかったなぁ、アルテウス。もう少しでエンディングまでいけそうなのにな。詰めが甘いんだな」 「うるさい!今回でお主と会うのは最後じゃ」 ヘルメスに拳をふりあげると、彼は軽く身を宙に浮かせ、カラカラと笑って手を振り上げた。とたんに派手な打ち上げ花火が何発も夜空をまう。 「今回で連載計50話達成おめでとう!いや、ここまで回がかさむとは、俺は思わなかったね!文字通りに神様もびっくりだ!ところで、今までに何度死んだのだい?いやぁ、回数が多すぎて俺はもう覚えてないんだ。頼むから教えてくれよ。おっと」 拙者の必殺の居合い抜きから発せられた剣の一撃は空振りに終わった。拙者は怒りに震える手を自重しながら剣を鞘に収めたが、そのころにはヘルメスはとっくに姿を消していた。 くそっ、神も仏もござらぬ。ゼウス神も守り神もこの巻の冒険には、まるで役にたたぬしな。
まずは、アリアドネを結婚式のために立ち寄った島へ置き去りにする。さらば、アリアドネ。また死者の国であおうぞ。 そのあとは船員の反乱を無事しずめ、アテネで父上の死を見届けると、遭難を繰り返しながら故郷へ戻る旅を続ける。たどり着いたトロイの宮殿で従兄のアグノステスを事故で死なせ、ニンフの島オギュギアで4年半を過ごしたあと、軍神アレスの神託によって従兄殺しの罪滅ぼしのためにオルビアにあるアレスの神殿かキルケの島へいく2択の場面になった。
船の上でしばし考える。これまで2回もアレスの島へ行く選択肢じゃったしな。今回はキルケの島に行こう。神話でキルケは邪悪な魔女と噂を聞いているが、対処方法は知っている。確かニンニクの花を編んで作った冠を被ればきゃつの魔法にかからないはずじゃ。 「待ちなさい!それはブラッドソードだったかしら、とにかく違うゲームブックの話しでしょ。他と混同しないように!」 突然、空に虹がかかり虹色のローブに身をまとった女神が目の前に舞い降りた。 「私は虹の神イリス。とっても重要人物よ。だってヘラ様からあなたへ重要な伝言をことづかっているもの。それまた重要なことなのよ。だってオリンポスの神々はあなたのこととっても気にしてるしそれにキルケはわたしたちはあまり好きじゃないのよ。とっても意地の悪い女なんだから。もしそんなのがあなたの好みなら否定はしないけど、わたしたちのほとんどはそうじゃないし実際」 「ちょと待つでござる。いいから用件だけいってほしいでござるよ」 この女神は話し始めると、とにかく長ゼリフなのだ。どのくらいかと言うと、1ページは自分のセリフで一気に埋めてしまう程なのじゃ。 とにかく彼女からモリーという草の根をもらって食べる。なんでもこれでキルケの魔法から、身を守られるらしい。 とりあえず、これで覚悟はできたのでキルケの住む島へ行き、魔女にあった。キルケに兄弟殺しの罪滅ぼしのために必要だといわれ、差し出された飲み物を我慢して飲む。キルケは拙者がなんともないのを見て不機嫌になった。やはり何か怪しげな薬を入れていたらしい。 キルケは前評判どおり、邪悪な魔女だったのだ。船で一緒にきた仲間達は豚に変えられてしまっていたのを知ってぞっとする。彼らを元に戻すように言うが、キルケは拙者をあざ笑うだけでどうにもならなかった。拙者自身は無事に罪を清めてキルケの島から脱出できたが、結果的に仲間を見捨ててしまい良い気分ではないの。これならアレス神殿で一人SMをしたほうがましじゃったな。
キルケの島から再び旅立った拙者。しかし、ここからは大筋では2つ前の冒険とそう変わらぬ展開じゃった。 死者の国に行き、そして兄じゃに会い、父親の死の穢れを払うためにピタロスの一族を探せという助言を手に入れる。 アテネを出たところで鉤づめの足に鳥の仮面をつけた鳥人に襲われる。ここで前はやられたが、今回はテーベの町まで必死に走り続ける。そして今回は運良く逃げ切ることができた!おまけにテーベの町を歩いているとこんな会話が耳に入った。 「……ピタロスの部族だ。ここから20マイルばかり向こうにキャンプしているんだ」 緊張に思わず体がこわばる。いよいよじゃ、いよいよ求める相手に近づいたのじゃ。 ピタロスの部族がいるという場所に向かって吹雪の道中をひたすら北に向かう。しかし、寒さからか、今までの旅の疲れが限界にきたのか、道中で拙者は倒れてしまう。おお、今まで数々の苦難をくぐり抜けてきた拙者もここまでか。眠るように安らかに死ねるのがせめてもの救いか。じゃが、しかし、ここまできて。 誰かが拙者の体を揺り起こした。簡素な外套に身を包んだ2人が、拙者を心配そうに見つめている。 「アルテウスさんですね」 「なぜ拙者の名前を」 「私たちはピタロスの一族の者です。しっかりして下さい。私たちはあなたを迎えに来たのですよ!」
拙者は床に敷物をしいた暖かいテントの中で寝かされた。そばにはピタロス一族の女が控え、やさしく看護してくれる。 ああ、人の気持ちが暖かい。ひさしぶりだ。こんな優しい気持ちになったのは。 ある程度、体力を取り戻すと清めの儀式を受けたいと長老に申し出る。長老はうなずいて、テントから出て細い道を歩きだした。 ここで今まで温存していた(というよりは使う機会のなかった)、ゼウス神への嘆願権を使用し加護を願う。なぜかわからんが、選択肢があったゆえ、そうしたほうが安全な気がしたのじゃ。(名誉点が1まで減少し、恥辱点が0になる) 拙者がついていくと長老は小さな洞窟に入っていった。中には同じピタロスの一族が手をつなぎ、輪になって座っている。拙者と長老も輪の中に入って、しゃがみこんだ。右側の男が小袋からキノコを出して、熱湯の入った椀に入れて拙者に差し出した。 一気にそれを飲み干す。 皆、その様子をニッコリ笑って見守り、大丈夫だというように拙者の手を強く握った。拙者は黙祷して、拙者が生まれてから今までの光景がめまぐるしく見えるのを受け入れていった。 そして時間は流れ、拙者は目を開けた。儀式は終わったのだ。拙者は感動を覚えながらピタロスの皆に礼を述べる。 「終わった。拙者は生まれ変わった。父の墓から開放されたのです。みなさん、かたじけない!本当に感謝の言葉もござらぬ」
もう家路を妨げるものは何もなかった。ピタロスの一族と別れ、拙者は故郷トロイゼンを取り巻く、ふもとの山までたどり着く。 霧雨の中、町の方角から家々の煙がたなびいているのが見える。懐かしさに涙があふれた。もうすぐ母上に会えるのじゃ。拙者はもどかしい思いで走り出す。 次回は感動の最終回じゃ!
by銀斎
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