冒険記録日誌
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2021年06月12日(土) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その11 |
再び、黄泉の国へ向かう洞窟を下り続ける。突然、足もとの地面がなくなって拙者の体は虚空に投げ出され、はるか地底へ落下していく。 うあぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……! 落ちるにしたがってあたりの空気がもやってきて、それとともに落下スピードも落ちてきた。あたりは濃霧で、まるで雲のクッションに包まれたような感じだった。 驚いたことに無傷で地面に足がつく。霧の中をかき分けるように歩いて行くと、ふいに霧が晴れて、自分が大きな川岸で無数の亡者どもと一緒に歩いているのに気づく。 川岸には一艘の渡し船があって亡者どもを乗せていた。これが三途の川というわけか。 自分も船に乗ろうとすると、渡し守にはばまれた。オボール硬貨一枚を渡し賃として支払わねばここは通れないらしい。 なるほど、見るとどの亡者も舌の上にオボール硬貨をのせている。埋葬のときに親族から遺体に入れてもらったのだろう。川を渡れない亡者はここで一千年もの間、さまようことになると伝説で聞いたことがあるな。しかし、困った。拙者には持ち合わせがない。 「おお、久しぶりだな。アルテウス。渡し賃をもってないのか?ただ乗りお断りがここのモットーだからな」 死者の国らしからぬ、生気にあふれた声に拙者がビックリして振り返ると、なんと商人マルコスがいた。彼は大きな荷物を背負っている。 「なんと、貴様は死んだのか。それにしては元気そうだが?」 「なんだって?違う違う、俺は商売に来ただけさ。ところで困ってるんだろ?お前の剣と引き換えにオボール硬貨を調達してやるよ」 ここで剣を失うのは不安だが、ここで動けなくてはどうにもならぬ。拙者はしぶしぶ、剣を彼に手渡した。マルコスはひょいと傍の亡者の舌から、オボール硬貨を取り上げると、拙者に手渡した。 「なんということじゃ!それではこの亡者はどうなるんだ」 「知ったことか。俺はあんたが困っているからオボール硬貨を都合しただけだぜ」 (不幸な亡者に迷惑をかけることになったので恥辱点を1点増やす) ともかく拙者とマルコスは、渡し船に乗り込む。渡し守が川底に竿をさし、船はゆっくりと川を渡り始めた。それにしてもこの男とはどこまで腐れた縁があるのであろうか。
三途の川を渡る船は静かに対岸へと到着した。 「急ぐからこれで失礼するよ。そら、ザクロの実でも食べて腹ごしらえするがいい」 マルコスは拙者にザクロの実をくれ、一足早く船から飛び降りると、スタスタと何処かへ歩いて行った。手にのこったうまそうなザクロに食欲をそそられる。 拙者はザクロの実を地面に投げ捨てて、先に進んだ。黄泉の国で食物を食べれば二度と生者の国へ戻れなくなるのを知っていたのじゃ。マルコスの悪ふざけのやり方は、もううんざりするほどわかっているのでな。 すぐ近くで獰猛そうな犬の吠え声が聞こえた。霧の中から3つの頭をもった巨大な地獄の番犬が飛び出してくる。黄泉の国を支配するハデス神のペット、ケルベロスだ! 恐ろしい敵との遭遇に髪の毛が逆立つ!ふっ、少々装備が心ともないが、拙者逃げるような臆病なマネはしないでござるよ。 剣をしっかりとにぎりしめて、拙者はきゃつの前に立ちはだかった。 するとどうしたことだろう。ケルベロスは拙者の姿を見るなり、キャンキャン悲鳴をあげて逃げ出したではないか。ふふふっ、どうやら拙者の気迫に気圧されたらしいな! (名誉点を2点得る。実のところケルベロスは、ライオンの皮をつけた人間の姿に、ヘラクレスがまた自分を捕まえにきたのかと驚いたのだ)
by銀斎
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