冒険記録日誌
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2021年06月11日(金) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その10

 翌朝、通りかかった別の種族に助けられた拙者は、またたどり着いた港で船に乗り込んで、旅を再開した。そうして上陸したこの地がエジプトであることを知る。ああ、拙者はなんと遠くの地まで来てしまったのじゃろうか。
 日は急速に暮れてくる。ここでアテネの王としてエジプト王の宮殿に尋ねるか、エジプトの神アモンの神殿に保護を求めるか、宿を探すかという選択肢があった。
 アテネの王といっても今のみすぼらしい姿では信じてもらえまい。また宿にいっても無一文では叩き出されるのがオチじゃ。異教徒の神にすがるのは本意ではないが、アモンの神殿に一夜の宿を求めることにした。
 神殿は巨大なほこらのような建物だった。神官にことわりを入れ、吹きぬける風の当たらない角を見つけると、猫のようにまるく寝ころんだ。とても快適とはいいがたいが、外で野宿するよりはましじゃろう。
 うとうとしはじめたとき、厳しそうな顔つきをした女が目の前に立っているのに気づいた。いや、見覚えがある顔じゃ。見覚えがあるどころじゃない、なんと女神ヘラではないか!
 「おお、ヘラ様。異教徒の神殿に泊った拙者をお許しください。ほかに方法がなかったのです」
 拙者の謝罪にヘラは、あきれたように言った。
 「おばかさんだね!アモンの神殿に泊ったからって、怒るもんか。アモンとはゼウスのことなんだよ!エジプト人の発音だとそうなるのさ。さて、お前は明日になったらオアシス・アンモニウムに向かって旅立ちなさい。砂漠の真ん中にある神託所さ。なんでそんなところに神託所を建てたのか、エジプト人のセンスはわからないけどね。でもなかなか良いところらしいよ。さあ、それまでにいくらかでも眠って体力を蓄えておき。旅はまだ長いんだからね」
 女神の姿はそこでフッと消えた。
 わざわざそんな辺鄙な神託所にいかせずとも、ここで神託を教えてくれればよいのにな。

 翌朝から拙者は、また船にのり、ワニと戦い、ラクダにのって砂漠を渡り、やっとの思いで砂漠の神託所にたどりついた。小柄なアラブ人の神官に用件を伝えると、彼は神託所の奥へ通してくれた。するとそこには、なにやらパピルスに一心不乱に何かを書きなぐっている一人の男がいた。男は拙者に気づくと驚いた拍子にインク瓶を落としてしまう。
 「アルテウス。驚かせるじゃないか。どうしてこんなところに」
 なんとその男は、予言の神アポロではないか。拙者が答えようとすると、彼は手をふってとどめた。
 「ああ、わかってる。父親殺しの罪を祓いたんだな。それにはある一族にであう必要があるそれはピ…、ピッポ、ピップじゃない、ああ、すまない。そのことは予言したのだが、自分で書いた字が読めないんだ。お前なら読めるかな?」
 アポロ神が差し出した紙を覗きこんだが、字とよべるのかも疑問なほど汚く、とても判読できない。
 「ああ、少し思いだした。たぶん、ピディピデスだったかもしれん。だがはっきりとは思い出せない。そうだ、お前の兄テセウスなら知っているから、彼に聞いてみるといい」
 「兄じゃは残念ながらもう死んでもうす!」
 「なに死者の国に向かえば会えるさ。美の女神アフロディテの島キテラに向かうがいい。そこで会う人物に話は通しておくよ」
 死者の国へ行くじゃと!?冒険はのぞむところでござるが、神の物忘れのためにわざわざハデスの治める危険な地へいくのは何か納得できんのう。

 砂漠を出て、メンフィスに向かい、そこから12日間の航海のあと、美の女神アフロディテの島、キテラにたどり着いた。内心アフロディテ様の登場を期待したのじゃが、そこでは小柄で黒髪の年老いた女が、拙者を待っていた。
 「遅かったですね。私の名はシビル。2日はこの地で待ちましたよ。黄泉の国までテセウスに会いにいくのですね」
 「そうでござる。兄じゃは拙者が罪の穢れから解放される方法を知っているらしいのじゃ」
 「わかりました。まずこれをお持ちなさい。この先はこういったものが必要です」
 シビルは剣(攻撃力2)と胸当て(防御力2)を拙者に手渡してくれた。やはり死者の国は厳しいところらしい。そして彼女は大洞窟の中まで拙者を案内してくれた。
 洞窟の途中で彼女は立ち止った。
 「わたしはここから先はいけません。ここでお別れです」
 「あい、わかった。いろいろとかたじけない」
 彼女は入口に向かって歩きだした。
 「ご幸運を祈ります」
 彼女のたいまつの光が遠くに消えると、拙者は暗闇に一人ぼっちになった。理由もなく、寒気がする。
 ここで怖気付くわけにはいかないでござる!
黄泉へ続く洞窟は、果てしなく下りが続いている。途中で左側へ枝道があったので、そちらに進んでいくと上り階段があり、進むと外の森に出てしまった。
いかん、無駄道を通ったらしい。
 振り向いて再び階段を降りようとすると、大きなライオンが襲いかかってきた。仕留めると、皮をはいで着てみる。くっくっくっ、まるであの英雄ヘラクレスのような姿ではないか。死者の国へ向かう勇気が出てきたでござるぞ。


by銀斎


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