冒険記録日誌
DiaryINDEX|past|will
2021年06月10日(木) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その9 |
虹の女神のあまり役にたたぬお告げを聞いた拙者は、船に乗ってきた仲間たちと別れ、再び小さなボートであてもない航海をつづけ、やがて北アフリカの海岸までやってきた。 ここの住民たちはのんびりした様子ですごしており、時折頭上にたわわに実っている黄色い果実を、もぎ取っては食べているようだった。 そんな彼らの中に一人、様子が違う者がいた。そいつは拙者を見て手を振ってきたではないか。なんとあのフェニキアの商人マルコスではないか。奴と拙者はよくよく縁があると見えるのぅ。 「アルテウス!ここであんたと会おうとは思わなかったぜ。こっちにきてザクロの実の荷造りを手伝ってくれないか。ここの住民はロトスの実にしか関心がないのさ。まあ、それだけ美味いんだがね。お前もひとつ食ってみるかい?」 彼はここの住民も食べている例の黄色い果実を2つ取り出し、実のひとつを自ら食べ始めると、もう一つを拙者に手渡した。礼を言って拙者もそれを受け取る。 せっかくの勧めであるが、拙者はマルコスの性格を知っていた。ひとくち齧って、食べるふりをすると、マルコスの注意がそれたときに地面にそれを吐き出す。(なぜか恥辱点を1増やす) マルコスは拙者の吐いたロトスの実に気づくと、ずるそうに自分もさきほど口に含んだロトスの実を吐き出してニヤリと笑った。思ったとおりだ。この実は麻薬のような中毒性があり、一度飲み込んだが最後、ここの住民のようにふぬけのようになってしまうのだ。 「まったく、ここの住民の口にしか合わないものさね。よく売れるなら、もっと持っていくんだが」 マルコスそう言って、拙者を船に乗せてくれるわけでもなく、船員達を急き立てて去ってしまった。なんの為に登場したのだ。あやつは。 拙者は再びボートにのって孤独な旅を続ける。ある日、食料を求めて内陸に入ってみると、原住民とうまく交渉ができ彼らの歓待を受けた。宝石の埋まった短剣(攻撃力1)を進呈されたうえ、ボートいっぱいに詰まれた食料を見て、拙者、久しぶりに人間の優しさに感じ入ったわい。
気の良い原住民との心休まるひと時もすぐに終わり、拙者は旅を続けるためボートを漕ぎ出した。そよとの風もなく、夜になっても月の光もなかった。すると今夜は新月なのじゃな。 うっかりオールを海に落としてしまう。舌打ちしたが、父親殺しの罪を清めねば故郷にも帰られぬ、特にあてのない旅じゃ。しばし潮の流れのままにボートを向かわせてしまおう。拙者はボートを漂わせながら、めずらしく落ち着いた気分になり、瞑想をしながら、今までの悲惨な旅を思いかえしていた。
ふいにバタバタと耳障りな羽音と、ピシリと鳴るムチの音が静寂をやぶった。目を開くとなんとそこには復習の女神として知られる醜い三姉妹が、ボートの周りを旋回しているではないか。彼女たちは一斉に叫んだ。 「われわれ復習の三姉妹は、正義の手先。汝オイディプスを産みの母と婚姻した罪により処罰する」 「待つでござる!拙者はアイゲウス王の息子、アルテウス!お主らは人違いをしているでござる」 「黙れ、悪党。われわれは常に正しい。アルテウス、貴様は確かに母親と通じたのだ」 「何をぬかす。さきほど、拙者のことをオイディプスと間違って呼んでいたではないか!私は母親と結婚した記憶はない!」 なんということだ。この呆けた三姉妹は、まるであずかり知らぬ他人の罪で、拙者を罰しようとしている! 「誰かがしたのだ。確かに見たぞ!われわれがくだす罰は不快でしつこいぞ」 誰かがしたとは、なんといい加減でござろうか。あきれて口も聞けない拙者を、三姉妹はムチで幾度も打ち据えると、仕上げにボートをひっくり返し海に放りこんでから去っていった。 拙者はボートに戻ろうと必死に泳ぐが、海流につかまってしまい、果たせないまま流されてしまう。
またどこかの浜辺にながれついた拙者は、神々の敵意に決してくじけないと決意を新たにする。ここまでコケにされたからには、拙者、意地でも故郷に帰ってみせるわい。 さっそく船の代用品になるものを捜そうと浜辺の様子をみていると、大勢のヌビア人に襲われ降伏を余儀なくされてしまう。捕虜になり、脱走を試みるも、道中にヒョウに襲われてしまう。辛くも撃退したものの、足を痛めたところを先ほどのヌビア人どもに救助され、結局は奴隷としてすごすことになっ た。負けるものか!負けるものか!
奴隷として一年が過ぎたある日の夜、祭りの最中に籠に入れられたライオンが飛び出して、人に襲い掛かかるハプニングがあった。脱走のチャンスだ。混乱に生じて、ヌビア人たちのキャンプを抜け出し、暗い草原地帯を必死で走り抜ける。 「拙者は絶対に!絶対に負けないでござるぞー!」 十分遠くまで走ったところで拙者は絶叫すると、そのまま木陰に倒れこんでぐっすりと眠り込んだ。
by銀斎
|