冒険記録日誌
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2021年06月03日(木) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その2 |
アテネへと続く帰りの船旅は、その後もまだまだ続く。 ポセイドン神が守り神にもかかわらず、船は行きと同じくまたしても嵐に見舞われ、どす黒い海面の大しけの中を船は木の葉のようにゆれ動いていた。 ふぅ、2巻ではまったく出番のなかったうえに、ここでもろくに助けてくれぬとは、拙者、守り神の選択を誤ったかもしれんのお。 災難続きで弱っていた船員たちもストレスが貯まっていたようだ。一部の水夫たちが拙者を指差してなじりあげた。 「こいつのせいだ!俺たちがこんな目に会うのも、この男を神が罰しているからだ!巻き添えはごめんだぜ。こいつを生贄にしよう!」 狂ったように揺れる船の中に緊張が走った。アテネの若者たちや残りの水夫たちは、この事態にどうしたらいいのか、オロオロとただ困り果てているようだった。 降伏して船から小船で降りる選択肢もあるようだが、とんでもござらぬ!拙者は声高らかに、アテネの若者たちに一喝した。 「武器を取れ、アテネ人よ、立ち上がれ!拙者の味方になるものは誰ぞ!刀の錆になるのは誰ぞ!」 ここで何人のアテネ人の心が動いたかをサイコロでチェックする。幸いアテネ人たちは拙者の味方だった。 船長が遅ればせながらノタノタとやってきて、水夫たちを説き伏せ、船内は平穏な状態に戻っていった。最初の試練はうまく乗り越えたようじゃな。
翌朝、船長と甲板から朝日を眺めていると、後方から一隻の船がぐんぐんと追いついてきた。 海賊船かと身構えたが、船長は笑って説明してくれる。 「船体からさっするにあれはフェニキアの商船ですな。あんなに急いでいるのは、おそらく腐りやすい荷でも運んでいるのでしょうなぁ」 会話している間にもその船はぐんぐん、こちらの船にせまってきて、ついには並走するところまでになった。その船は危うく衝突しそうになるまで接近すると、なんと鉤爪のついた長い棒のようなものを差し出して、こちらの船のマストを引き裂いてしまったではないか。 唖然とする拙者と船長らの前を、商船は追い越していく。ファニキア人が高笑いしながら、こちらに向かって叫んだ。 「この世の中はすべからく競争なのさ!誰にやられたかと聞かれたら商人マルコスに出し抜かれたんだと報告してやれよ。じゃあばよ」 マルコスと名乗った男の船は、「ジーン号」という船名を見せながら、ゆうゆうと去っていった。
ズタズタになった黒いマストを取り替えようとしている船員達。 拙者はポセイドンの忠告を思い出して、ヒントを使って、白いマストにかけなおしてくれるように船長に頼んだ。船長はうなずいて船倉から白いマストの帆を取り出してくれた。 史実のギリシャ神話では兄のテセウスが、黒いマストをかけたまま船をうっかりアテネの港に入港させたはずじゃ。その光景を宮殿から見たアイゲウス王は、テセウスが死んだと勘違いして悲嘆のあまりに自害したという。危ない危ない。 その後の船は順風にのってすみやかにアテネの港へ入港していった。 港に集まった群衆から歓呼の声と拍手が沸きおこる。うむ。英雄気分でいい気分じゃ。 「アルテウス、おお、わが息子よ」 渡し板から陸地に降り立った父君アイゲウスはまっさきに拙者に、ひしと抱きついて喜んでくれた。
しかし、父君はふいに胸をおさえると地面に倒れ伏してしまったではないか! 父君は急いで宮殿へ運ばれたが、容態は悪いようだ。拙者が旅立つ前とは見間違えるばかりに、やつれた顔をしている。寝たまま父上は拙者にそっとささやく。 「終わりのときがきた。すでにわしの心臓は心労でずたずたになっていたのだ。よくやったアルテウス。だが、今は家にお帰り。そしてお前の母に伝えてほしい……」 拙者は顔を近づけた。父上は苦しげにつぶやく。 「すまなかった……と」 それが最期じゃった。そのまま父君は身罷われてしまったのじゃ。
父君が入った棺が運ばれていき、かわりにイテコン将軍がやってきて拙者につげた。 「群集は怒っています。あなたが王の死を運んできたと。すぐにあなたがここから立ち去れるように手配いたします」 拙者は将軍に感謝の気持ちを伝え、クレタ島での出来事を詳細に語って聞かせてやった。(情報点1につき名誉点2に換算。つまり名誉点が8加算される) それから変装して宮殿から連れ出され、用意された船の待つ港へと向かう。 これからどうするべきか。父君は故郷に帰るよう言っておられたが。 しかし、まずはあてがわれた船室に駆け込むと、つかの間しかめぐり会えなかった父君の死を一人偲ぶことにしたのだった。
by銀斎
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