冒険記録日誌
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2021年05月19日(水) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その17

 次の朝になった。
 あの皮肉屋の老人ディプティスが反乱を計画したかどで投獄されたりと、他にも宮廷内ではいろいろ大騒ぎがあったようじゃが、説明するとややこしくなる内容は端折っておく。
 さて、いよいよ決闘の時間がやってきた。決闘はデメテル神の神殿内で行われるそうだ。
 ここクレタのデメテルの神殿は、拙者が第一巻で体験したデメテル神の神殿と大きくは変わらない。
 水の入った壷と、穀物の入った鉢が祭壇に供えてあるのも一緒だ。
 しかし、さらに首をはねたサギの頭が供えられている。さらに厳しい護衛に囲まれた、この後生贄となるアテネの7人の青年と7人の娘たちの姿も見えた。生命と成長と豊穣をつかさどるデメテル神への祭りとしては、クレタ人のやりかたはなんとも冒涜的じゃ。
 まっておれ。アテネの若者どもよ。拙者が必ず助け出してみせるからな。

 高僧のパングリオンが声高に宣言をした。
 「女神デメテル。我々はあなたを讃えるため、ここで二人の若者が戦います。競技者よ。前に出よ」
 対戦相手のクレムトンが、腰布一つの裸になって、腹をピタピタ叩きながら、大股でリング内を歩き回っている。
 「まるでチャンピオン気取りだな。アルテウス、君の健闘を祈るよ」
 オプリスが拙者の上着を脱がせながら、激励してくれる。向かい側の貴賓席を見ると、なんと(今回の冒険では)初対面のアリアドネ姫が、拙者に向かって投げキッスをしてくれたではないか。
 よーし、やる気が出てきたでござるよ!

 決闘がはじまった。パンクラティオンという競技らしいが、内容はボクシングのようなものらしい。
 この決闘は通常の戦闘ルールではない。説明すると次のとおりだ。

1.攻撃するときはヘッド、内股、ボディの三箇所のうちどこを攻撃するか決め、サイコロを一つふって、クレムトンがどこを防御していたか判断する。
2.うまく攻撃を当てられたら、ヘッドは3点、内股は2点、ボディは1点を相手の持久点から引く。
3.次は反対に拙者が三箇所のどこを防御するか決め、サイコロを一つふって、クレムトンがどこを攻撃してきたかを判断する。ダメージも同じ。
4.以下、この繰り返し。先に持久点が0になったほうが負け。

 クレムトンの持久点は50点。拙者は47点。
 決闘のルールをもう一度よく見て考えた。理屈ではヘッドは6分の1、内股は3分の1、ボディは2分の1で命中することになっている。つまり、内股への攻撃が一番効率がいいのではないか?
 そこで、拙者はひたすら、クレムトンの内股を攻撃し、自分の内股を防御し続けた。案の定、最初は互角の戦いだったが、少しずつクレムトンの方の持久点が減り始める。
 「とどめじゃ!」
 拙者の最後の一撃が決まるとクレムトンは、リングに崩れ落ちた。すさまじい戦いに群集が歓声をあげる。ここで選択肢があった。「クレムトンを殺すか、助けるか」
 ミノス王との約束ではクレムトンを殺さなければならない。しかし、拙者はそのまま黙ってリングから降りて、オプリスと勝利を祝いあった。
 動かない者を殺すのは恥ずべき行いじゃからな。

 「血が流された!」
 ミノス王の突然の大声に、拙者は驚いて振り返る。なんと、クレムトンは小姓たちによってハンマーで頭を割られているではないか!
 「血は血であがなわなければならない。デメテルよ。この異国人の犠牲を受けたまえ。衛兵ども、こいつを迷宮に放り込め!」
 ミノスの号令と共に大勢の衛兵が拙者を取り囲んで押さえつけた。なるほど、どのみちミノスは最初から裏切る気だったのだ。
 そのとき、拙者と友好関係にあったデメテル神が、オリンポスから拙者の体内に光臨した!
 自分でも信じられぬ怪力で衛兵どもを投げ飛ばすと、高僧パングリオンにつめよる。デメテルは拙者の口を借りて宣言した。
 「パングリオン!お前は私の祭りを、人間の忌まわしい一面である死の祭典へとおとしめた。さあ、その報いを受け取るがよい」
 そのとたん、パングリオンは全身がオレンジやマンゴーやバナナなど無数の果物でできた奇妙な像へと変わった。静まり返る神殿の人々の前で、それらはしばらく人型になっていたが、やがてくずれおちて果物が祭壇中にころがっていった。
 女神は去っていったが、拙者は声をかぎりに叫ぶ。
 「拙者の武具をもってこい!自ら迷宮に入って、悪魔を綺麗さっぱり退治してやろう!」
 全ての武器と防具がすみやかに運んでこられた。まだ、騒然としているクレタの人々をチラリと見てから、迷宮へつながる穴へと飛び込む。(名誉点5を得る)
 さあ、時が来た。今度こそ、ミノタウロスを退治して見せようぞ!

by銀斎


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