冒険記録日誌
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2015年03月28日(土) 都会のトム&ソーヤ ゲーム・ブック 「館」からの脱出(はやみね かおる/講談社)

 「都会のトム&ソーヤ ゲーム・ブック 修学旅行においで」(2013年06月16日の冒険記録日誌参照)に続く、都会のトム&ソーヤゲームブックの第2弾です。
 本書も人気児童小説「都会のトム&ソーヤ」シリーズの作者、はやみねかおる氏自身によるゲームブックです。
 前作の紹介の時に説明しましたが、作者本人が書かれているから二次創作ではありません。これは凄いことです。しかも第2弾とか奇跡みたいな話です。本の帯の「こんな画期的な本があったとは!!」とかの10代読者達の感想コメントがまぶしいです!
 さて、ちょっと落ち着いて内容の方も説明しますと、今回の冒険の目的は、栗井栄太というゲーム制作集団の館に招かれた内人と創也、そして「きみ」の3人が、館から脱出するゲームに挑戦するというものでした。最近、脱出ゲームって流行りなのかなぁ。
 ちなみにこの館でのゲームは、小説で内人と創也が挑戦するエピソードがありまして、今回は新装された館で2度目の挑戦ということになります。小説版を読んでいなくても一応遊べますが、栗井栄太のメンバーが変人揃いなこととか、いろいろ知っておいた方がストーリーが楽しめると思うので、小説の2巻までは読んでいた方が良いでしょうね。
 ゲームルールの方は、少数のアイテム管理くらいで簡単です。外出先でも手軽に読める……といいたいですが、謎解きでスケルトンパズルを解かないといけない箇所があるので、それは難しいかも。

 遊んだ感想ですが、今回はちょっと不満が残りました。
 まず、ストーリー面。事件の真相に関する云々とかは、小説版も似たようなノリの事件が多いのでまあいいんですが、「きみ」つまり主人公の存在感が薄いのです。
 具体的には館を捜索しているときの様子は、全体的に内人と創也の間だけの会話が多く、2人は時々思い出したように「きみ」に話しかけてくるくらい。
 また、本作は前作と同じく、パズルみたいな謎解きがところどころ存在するのですが、解法がわからない場合は、創也がヒントをくれ、それでもわからない場合は、創也が回答して先の展開に進むのです。謎解きで行き詰った読者への救済措置でしょうが、そのために「別に主人公がいなくても、内人と創也だけで十分じゃん」的な印象を与えてしまってます。
 前作は修学旅行がテーマだっただけに、主人公はクラスメートの一人として、それなりのポジションが見えていたのですが、本作は内人と創也に加えて主人公の「きみ」まで館に招待される動機が弱いので、2人の冒険にただお邪魔させてもらっているだけに感じてしまいました。本作は小説と同じく、主人公は内人でよかったのではないかなぁ。

 そして、ゲーム面。前作の「修学旅行においで」は、一方向システムのゲームブックでしたが、今回は館の中を自由に動き回れるということで、双方向システムを採用しています。
 問題なのは、館の中を自由な順番で見て回れても、先に進むための方法は、先にあの部屋でイベントをこなして次にこの部屋、という風に一つの手順しかないという事です。要するにどんなプレイでも、ゲームオーバーになる選択肢を除けば、結局同じ展開なんですね。
 このアイテムは取らなくても進めるが後半でちょっとだけ苦労するとか、多少そんな部分があるくらい。もっとこう、このルートなら別の謎解きに挑戦することになるとか、こう進めればここで登場してくる人物が違ってストーリーが変わるとか、そんな大きな変化が欲しかったところです。もしくはあちこちで収集した情報を総合してやっと解ける謎解きにするとか、どちらの障害から解決していっても良いとか。
 誤解のないように言うと、一方向システムより、双方向システムが劣るという意味ではないですよ。私はどっちも好きですし、一方向システムでも、ほぼ一本道のストーリーしかなくて不満を感じるゲームブックはありますから。ただ、双方向システムは、一見自由に動けるように見える分、作者に実はほぼ一本道な展開ということに気づかれずに(あるいは双方向システムだからストーリーは一本道でもいいだろと)作られた作品が多い気がします。
 いろいろ文句ばかり書いてしまいましたが、なんだかんだいいつつもゲームブック版も本家の小説と同じく、(ちょっぴりゆるい雰囲気で)冒険を楽しむことができる作品です。はやみねかおる氏の後書きを読む限りでは、ゲームブック第3弾も考えているようなので、次回作はこうあって欲しいという願望を書いたようなものです。次も期待していますよ!


山口プリン |HomePage

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