冒険記録日誌
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2015年03月21日(土) ゴーストタワー魂の石(ジーン・ブラッシュフィールド/富士見文庫)

 富士見のAD&Dゲームブックシリーズの第2作目。冤罪(というか罠)によって投獄された主人公の戦士が、釈放と引き換えに魂の石を手に入れるため廃墟と化した城への探索を命じられるというストーリーのゲームブックです。
 主人公カーステン・ソルダーには、ハーフリング(ホビットのこと)の女、フリップと、祈祷師の男、サレックスという2人の仲間がいます。職業的に言うと、戦士、盗賊、僧侶のパーティといったところ。
 AD&Dゲームブックシリーズで、仲間を連れての冒険というストーリーは、他作品にもあります。しかし、大抵の作品は主人公1人だけの能力値を管理すればよいのに対し、この作品は3人の能力値をそれぞれ設定する必要があるという、シリーズでは珍しく、ルール的にも本格的なパーティ制を採用しているのが特徴です。それぞれ独自のヒットポイントがあり、なくなれば死亡しますし、サレックスの使える魔法にも数に制限があります。
 当然、管理する項目は増えますが、戦闘をサイコロ一振りで決着をつけるようにするなど、他の負担を極力減らしているので、パーティ制とは思えないほどルール的には軽く、快適に遊ぶことができました。
 パーティ製のゲームブックは、創元推理文庫のゲームブックのスーパーブラックオニキス、ワルキューレやウルフヘッドシリーズなどが有名ですが、そちらが戦闘メインでTVゲームのRPG的な雰囲気なのに対し、本作はこの場面では誰が危険を冒すのか?など、仲間の体力や能力も考えながらの行動が多いため、TRPGのパーティプレイの雰囲気が良く出ています。序盤の展開なんかは、罠探知に、ランダムで相手が変わる敵との遭遇など、まさにTRPGのダンション探索そのものです。
 でも、城内の冒険なのに海に浮かぶ小島へたどり着いたり、チェスのコマみたいに動かなくてはならない部屋など、冒険は真面目なのにヘンテコなシーンもいっぱい。「すべては“魔法の力”で説明すればいいんだよ」で済ませているようなノリです。T&Tソロシナリオもそうだったけど、海外ゲーマーによるTRPGって大雑把なノリで遊んでいるのかな?
 物語はあくまでも主人公視点で進んでいくのですが、主人公は序盤で警告を受けるのです。仲間のうち1人は裏切り者で、魂の石が手に入れば命を狙われるだろうと。そのため常にフリップとサレックスの様子を伺う描写があり、警戒しつつも協力し合うという緊張感がある展開となっていてなかなか良いです。
 主人公らに探索を命じた邪悪な伯爵や魂の石の正体について、最後まであまり説明がなかったのが若干モヤモヤしますが、囚人扱いされていた主人公に詳しい事情を知る機会があったはずもない、と考えれば現実的なのかも。
 ゲームバランスは厳しめ(特に魂の石の防衛装置についてはサイコロ運に頼る部分が大きい)ですが理不尽というほど難しくはありません。序盤である体力チェックの判定に失敗すると、矛盾する展開になる小さなバグがありましたが、総じて良作といえる作品でしょう。
 しかし、ラストは良作が台無しになるレベル。終盤の重要な選択肢で、選ぶつもりだった選択肢が存在しなかったのです。裏切り者の正体については、最初から想像していた通りだったので、あの選択肢がないのには納得できません。ゲームブックじゃなくてTRPGだったら思い通りにできたのに!と、久しぶりにゲームブック形式にもどかしさを感じてしまいましたよ。エンディングは数パターンあるのですが、ベターエンディングはあっても、ベストエンディングはない気分です。
 序盤で、城に潜入する前に衛兵を振り切り逃亡に成功する、という冒険が始まる前に終了してしまう展開があるのですが、ある意味これが一番のハッピーエンドかも。
 


山口プリン |HomePage

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