冒険記録日誌
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2015年03月06日(金) 闇の黄金郷(高千穂遙原案、森田繁作/富士見文庫)

 原案はダーティペアなどで有名な高千穂遙です。人気作家が関わっている小説の要素が強い現代冒険物ゲームブックということで、前回感想を書いた「魔境遊撃隊─ナイル川の呼び声─」に似た雰囲気を感じる作品です。魔境遊撃隊を遊んだついでに、こちらも遊んでみました。
 主人公は第一次世界大戦に大陸で活躍した秘密諜報員で、今は楽隠居をしている神崎史郎という男。以前、借金のカタに取り上げた古い壺を売ろうと手に取ったら、中に黄金と謎のメッセージが隠されていたのを発見、黄金郷を目指して上海に旅立つというストーリーです。
 主人公が元スパイという特殊な設定なのに、冒険のキッカケが全然関係ないですね。某小僧名探偵が探偵事務所に依頼されてきた事件より、なぜか偶然遭遇した殺人事件ばかり解決しているようなものでしょうか。
 上海でのハードボイルド的な展開、事あるごとに主人公を襲ってくる大日本帝国陸軍の特務機関やフランスの情報部、中盤以降はゾンビや触手もある謎の化け物の登場、ありえない程の超技術をもった古代の遺跡など、やっぱり魔境遊撃隊に近い感じでした。違いは美女とのコンビの冒険という事と、目的が財宝さがしという点で、そう考えると和風インディジョーンズといってもいいかも。

 ゲームのルールですが、主人公の能力値は、生命力、知力、戦闘力、経験値の4つ。所持品管理は武器とお金(上海が舞台だけに通貨単位は元)くらいです。サイコロを振って互いの体力を削り合うような戦闘はクリアまでに1回か2回くらいしかなく、戦闘の大半は○○がいくつ以上ならとか、サイコロを一つ振って○○との合計がとかで勝敗が決まって展開が分岐します。能力値の変動はそれほど多くありません。ゲームバランスも易しめで、本作のようなストーリー志向の強いゲームブックでは、これくらいの方がほどよくて好きですね。1回目のプレイでは闇の迷路で抜け出せずにゲームオーバーになりましたが、2回目でクリアできました。
 ただ、ハードボイルドな世界観のくせに、金銭管理だけは喫茶店に入る度に2元減らせとか細かい。途中で3000元とか入手するのに、2元とか誤差レベルですよ。遊んだ感じではゲームの進行的にも所持金の有無はさほど重要ではなかったので、金銭管理は無視して金はあるものとして遊んでもいいかもしれません。

 終盤の黄金郷では大きく2つの展開が用意されており、敵やエンディングも違っています。分岐点は、どっちの道を歩くかという、どうでもいい選択肢でして、それでどこの情報機関が黄金郷まで追ってこれたのか正体が変わってしまうのが不思議。できれば「前半でフランスの情報部に荷物を奪われてしまったから」とか、「あの日本人に話したから、帝国陸軍に黄金郷を嗅ぎつけられたのだ!」みたいな因果関係がある理由で分岐してほしかったところです。ただ、ルート分岐自体は2周目のプレイも楽しめるので良い工夫だと思います。
 あと終盤に一つバグがあります。パラグラフ42からは42へ移動となっていますが、正しくは43へです。ありがたいことに前のプレイヤーがエンピツで修正をしていました。ゲームブックの古本ならではの特典ですな。
 全体の感想としては、ストーリーや設定がベタな冒険小説風なだけに爽快感はあります。ヒロインは古武術の達人で雑魚ギャングくらいは自力で倒せて、飛行機の操縦までこなす有能さのくせに、言葉使いとか普段のふるまいはお嬢様というギャップがあるキャラで割と好み。
 誰が壺にメッセージを残したのかとか、この派手な仕掛けの動力はなんだとか、いろいろ突っ込みたい気もしますが、細かい理屈なんて考えずに楽しめって作品です。


山口プリン |HomePage

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