冒険記録日誌
DiaryINDEXpastwill


2015年02月26日(木) 魔境遊撃隊─ナイル川の呼び声─(栗本薫原作、永橋隆作/富士見文庫) 

 栗本薫さんの小説「魔境遊撃隊」を原作としたゲームブックですが、ストーリー的には原作の続編となっている作品です。(以下ここでは原作の小説版のことを前作と書きます。)
 私は残念ながら前作の方を読んだことはありません。ゲームブック版には序盤で前作の冒険について必要最低限の情報が説明されているので、知らなくても楽しめましたが、もちろん読んでいた方がより楽しめると思います。
 主人公は栗本薫という名前ですが、原作者本人ではなく同名の男性小説家だそうです。紛らわしいですね。
 冒険には仲間が同行しますが、メンバーを軽く紹介すると、チームの知恵袋である雷電博士(前作で博士は死亡しているが、実は双子の弟がいたとの設定!ドドーン!!)、日本刀を使う武道家でありニヒルで頼れる男の秋月(ルパンの五右衛門と違って女にも強い)、悪党だがなんだかんだと主人公に協力する羽目になる鮫島兄弟(怪力のデカブツと器用で悪知恵の働くチビというベタコンビ)と、見事に男臭い一行です。一応、時々一行の前に現れる謎の美女とかもいますがどうでもいい。そもそもストーリーが、前作でも中心人物だった印南薫という美少年から「囚われの身だから助けてほしい」と手紙を受け取ったので、仲間を集めてアフリカへ旅立つという内容です。助ける対象が、美少女ではなく美少年です。(大事なことなので2度言いました。)やはり主人公は、原作者、栗本薫の趣味と欲望を投影したキャラなのでしょうか。さすが、やおいや腐女子の元祖とか言われていた人だけはあります。

 ゲームのルールは、戦力点と生命点と情報点の3つの数値を管理するようになっており、ファティングファンタジーシリーズみたいな戦闘ルールもありますが、所持品管理はほとんど必要なくて遊びやすい方だと思います。
 戦力点と生命点は主人公個人のものでなく、チーム総合の戦闘力としての扱いで、新しく仲間が合流すれば戦力がUPし、一時的にせよ誰かがチームから離脱すれば下がります。仲間が合流する頼もしさや失う痛みを、ゲーム的にも表現しようという演出だと思いますが、戦闘システムと物語がイマイチ融合していない気がしました。というのも「生命点が少ないから、ここは危険な外出はせずに休憩して回復させよう」とか「今は戦力があるから逃げずに攻撃した方がいいだろう」というような、同じパラグラフでもその時のプレイ状況で判断が変わるような選択肢があまりないのです。セスナ機との戦闘と救出場面くらいかな。まずい選択肢を選んだ時のペナルティ(誰かが怪我して戦力が落ちるなど)の意味ぐらいはあるものの、これなら単純な分岐小説にした方が良かったのではと思いますね。戦闘に負けてもゲームオーバーではなく、負けた展開に分岐するとかだったら、また違ったかもしれないですが。
 私は一応ルール通りに遊びましたが作業感を感じたので、戦闘は全て勝ったことにして遊んだ方がいいかもしれません。それなら情報点を管理するだけですむのでメモなしで手軽に遊べて一石二鳥ですし。 

 小説面が強いゲームブックなので、1パラグラフあたりの文章量が長く、地の文章もしっかりしています。アフリカの秘境探検だけでなく、仲間集めに立ち寄った香港でのハードボイルドな展開などもあり、冒険小説としての読みごたえはありました。終盤はニャルラトホテプとか、這いうねる奴らが登場していてビックリ。前作読んでないから知らなかったけど、実はクトゥルフゲームブックだったのか。
 おおまかには一本道ストーリーですが、道中の細かな展開は割と枝分かれするので、ちゃんと選択肢を選ぶ楽しみもあります。クライマックスは選択肢がほとんどなくなり、普通の小説みたいな感じになっていましたがね。
 全体として意外と楽しめたので前作の小説版の方も読んでみようかと考えています。前作のファンには、その後日談を知ることができるという意味でもオススメできる作品です。



山口プリン |HomePage

My追加