冒険記録日誌
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2015年01月18日(日) リンクの冒険─暗黒トライフォース伝承─(井上尚美/JICC出版局)

 タイトルでわかるとおり、ファミコンゲームを原作にしたゲームブックです。パラグラフ数は200もありません。
 見た感じ攻略本みたいなデザインなうえ、表紙には「ファミコン必勝本」とまで銘打たれている非常に紛らわしい装丁をしていまして、当時は間違って買ってしまった小学生が絶対いただろうなぁと思わせてくれます。
 原作の「リンクの冒険」はプレイしたことはありませんが、ゼルダの伝説と同じ世界観のアクションゲームだそうです。
 ゲームブックの主人公は原作と同じくリンクです。ハイラルの危機を救うため、魔法ガノンを倒しに行くという、これ以上ない程に王道なストーリーで、ルール面も単純な分岐小説タイプです。

 本作の特徴は魔法システムです。リンクは魔法が使えることになっており、必要な状況になると、どの魔法を使うか選択肢から選ぶのですが、その魔法の名前が「みたす」「とかす」「かえす」「はなす」「おもいだす」など動詞なのです。妖精の説明では“言葉に魔法をかける”との事ですが、各魔法の効果はその状況によって違ってきます。
 例えば「はなす」魔法は、無口な少女に対して使えば心の内を語ってくれる(話す)効果かもしれませんし、敵に対しては掴まれた腕を振りほどく(離す)のに役に立つのかもしれません。「みたす」魔法を使えば、薄れゆく日の光が再びあふれるかもしれないですし、水牢の中ならたちまち水がみちて溺れ死んでしまうかもしれないというわけです。
 つまり魔法の選択シーンでは、リンクが助かるような展開になる単語を選ぶことができるかという、ちょっとした言葉遊びのようなパズル性があるのです。
 基本的に小学生向けに作られた作品なので、クリアは難しくありません。ゲームオーバーは存在しますが、魔法以外の選択肢は、無難な行動を選んでいけばそんなに詰まることはないでしょう。とはいえ、ゲームオーバーにつながる選択肢で、自分的に2か所ほど判断に迷う箇所があり、実際のプレイでは一度だけゲームオーバーになりましたけどね。
 小説的には地の文章は悪くないものの無難な出来で地味な印象ですし、ゲームブックとしても大まかなルートが一本しかないのは不満ですが、魔法システムのおかげで面白さは保てたのじゃないかなと思います。

 それにしても本作の魔法システムが、単発の使い捨てアイデアとはいささか勿体ない気もします。作りかた次第ではもっと面白く発展させられそうです。
 ここはネオゲーム文庫のゲームブックあたりが、このシステムを使って新作を作ってみてくれるといいですね。キャット&チョコレート方式(6つくらいの単語から2つ選んでパラグラフ移動する方式)ばかりじゃ飽きてしまいますし。他には同人製作でもありだと思います。ゲームブック作家の皆様方、一つどうですか。


山口プリン |HomePage

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