冒険記録日誌
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2015年01月04日(日) タイムバブルからの脱出(影山貴市/朝日ソノラマ)

 ここ数年最も探していたゲームブックの一冊ですが、このたび個人の方からお借りすることができたので、プレイができました。所有者の方に感謝感謝です。
 ストーリー的な内容は一言でいうと、不思議な世界に放り込まれた主人公が元の世界へ脱出するゲームです。
 この不思議な世界とは、タイムバブルと呼ばれていて、簡単にいうと小さな沢山の世界がブドウの房や泡のようにつながっている空間です。一つ一つの世界は、モヘンジョダロやローマ帝国など地球の過去の姿だったり、アトランティスみたいな伝説のような世界、住民が様々な闘技を繰り返す奇妙な世界など、バラバラです。
 この世界を作り出したのは、人類より高度な力を持つタイムビーイングという種族で、このタイムバブルに地球からさらわれてきた主人公、北条麟という高校生男子が放り込まれてしまいます。
 プロローグと序盤の説明で、タイムビーイングたちが彼がこの世界から無事脱出できるのか賭けの対象にしているとわかるのですが、上から目線の存在に仕掛けられたゲームに参加させられるのは嫌な感じがしますね。ただ、直接は書かれていないものの、主人公は地球で地震に巻き込まれて死ぬ直前にタイムバブルにつれてこられたようなので、ある意味タイムビーイングたちは命の恩人でもあるようです。

 ゲームブックのシステム面の話しもしますと、能力値などやアイテムのルールは一切なく、パワーグローブというアイテムの所有数を管理するだけですので、サクサク遊べます。
 なお、パワーグローブとは小粒な物体で、元の世界に戻るために必要なエネルギーであり、脱出のためには最後に持っている数が多ければ多い程良いと言うもの。この世界では貴重品らしく宿賃の支払いなどにも使えるという貨幣としての価値もあるようです。
 プロローグで主人公の脱出する成功率は25%だろうと、タイムビーイング達が評価していましたが、それに反してゲームの難易度は低いようです。今、振り返ると初回のプレイは割と損をする選択肢ばかり選んでいたようなのですが、それでも初回プレイでギリギリ脱出(クリア)できてしまいました。
 ランダム要素がないこともあり、一度解決法がわかってしまうと、最低限のパワーグローブ数でクリアできるようになるのでさらに簡単です。パワーグローブ不足でゲームオーバーということは、あまりないのではないでしょうか。

 このようにゲームバランス的には易しすぎる面もある本作ですが、読み物的には奇妙な世界を次々にめぐっていく展開がとても面白く、ジュヴナイル的なSF世界を堪能できて、とても完成度が高いです。
 ゲーム開始まもなく、エリという女子高生くらいの謎の女の子が現れ一緒に同行してくれるのですが、ジュヴナイルといえば少年少女ペアでの冒険はお約束ですね。
 また、タイムバブルの小さな世界というのはどんな世界かというと、例えばある世界では住民の脳内データはすべて電子化されてコンピュータの中だけで生きているとか、サムライ達が蛮族と戦っている世界とか、金銀財宝に価値がないのに海賊船が暴れる海洋地帯だとかそんな奇妙な世界ばかりです。
 私のお気に入りは、スポーツの盛んな世界。主人公が高額報酬につられてサッカーのゴールキーパー役へのスカウトに応じたら、実はこの世界のサッカーは、刃物付きボールで狙い打って相手ゴールキーパーが死亡したら得点というルール。試合が始まり、先に出場した別のゴールキーパーは目の前でクビチョンパとなり、主人公は顔真っ青、エリちゃんは黄色い歓声をあげて主人公をのん気に応援という、いい感じに狂った世界観がステキです。
 次に向かう奇妙な世界への扉は2〜5の選択肢の中から選べ、後戻りはできないので、一度クリアしてもまだ行ってない別の世界を試すために2度目に挑戦したくなります。

 
 それから、ヒロインのエリちゃんはかなり謎な人物です。
 女子高生くらいの外見と、愛想のよい性格とは裏腹に、行動はかなりしたたかで、主人公より要領よく立ち回って、パワーグローブを稼いでくれることもあります。主人公がエリちゃんの奴隷になって一緒にホテルに泊まるという、どうしてこうなった?な展開では、エリちゃんが迫ってきて、ジュヴナイルじゃアウトなことまでしています。彼女を怒らせたときの展開は、冗談でなく恐ろしいことになり、主人公とキスをするシーンにいたっては主人公に「初恋の味どころか成熟の極みだった」と言わしめるほどで、底が知れません。
 主人公の仲間にはもう一人?指導ロボットのディーという案内役がいますが、エリちゃんに比べると、どうでもよくなりますね。一応、ディーはディーファイブとディーセブンの2タイプあって序盤でどちらかを選ぶことになりますが、お好みで選んで問題なし。タイプによって助言の内容が違い、世界を移動するときに、初めて行く世界の情報を知りたいときは参考になります。私はディーセブンの方が好みかな。

 ラストは結構あっさりした感じで、物足りなさというか寂しさがありました。もしかすると真の隠しエンディングでもあるのかと探し回ったほどですがないようです。ちょっと残念。
 しかし、久しぶりに大ヒットなゲームブックでした。読み終ったけど数年後とか、たまに読み返したいので、今後とも入手できる機会があるようなら是非入手したいと思う作品です。


山口プリン |HomePage

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