冒険記録日誌
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2014年12月23日(火) オレのRPGノート(小野大輔/ウィズ)

 先日フラリと立ち寄った本屋で見つけた新作ゲームブックです。ただし、文具コーナーで。

 「オレのRPGノート」の装幀は、そのタイトルどおり、学校の授業で使うような普通のノートです。帯の売り文句が「かつてノートに描いたあんなことやこんなことがよみがえる…!! なつかしの落書きRPGを楽しみながら、バリバリ現役で使えるノート!」ですからねぇ。要するにおもしろ文房具の一種なわけです。
 大抵この手のノートで面白いのは表紙と最初の2・3Pだけで、後はごく普通のノートでガッカリなんてことが多いのですが、こいつはノートの半分くらいを使っているという、ノートとしての実用性はさておき、全パラグラフ数が78の結構ガチなゲームブックでした。
 落書きRPGと言うだけあって、中身は小学生が授業の合間にサボって描いたようなヘタウマ風に描かれたイラストが全パラグラフに入っています。
 ストーリーも主人公が魔王退治に出かけた勇者に姫様の手作り弁当を届けるという脱力系。しかも勇者は弁当に当たって死んでしまい、主人公が勇者の後を次いで魔王退治に出かけるというグダグダな展開。
 でも、演出されたヘボさに惑わされるなかれ。
 ゲームを始めてみれば、パズル要素がうまく使用されているだけでなく、HPやアイテムの存在もあり、サイコロを使ったバトルまであるという、ゲーム的には予想以上に本格的に作っています。(ちなみにHPやアイテムは付属のシールを張って管理。ノートの隅にはサイコロの印刷があって、サイコロがなくてもパラパラめくってちゃんと遊べます)
 特にこしゃくなシャーク戦は、アイテム狙いで、ついムキになって何度も挑戦してしまった。途中で仲間になる謎のビジョ?もいい味しています。
 この作品のポイントは、ゲームブックがブームのころのゲームブックファンならやった人が多いであろう、ノートに書いた「オレの考えた最強のゲームブック」の雰囲気を再現していることです。懐かしいですが、このコンセプトで売り出すセンスは新しいですね。ゲームブック入門として、最も面白さを伝えている一冊じゃないでしょうか。

 そして、ゲームをクリアして次のページをめくると、王様から新しい冒険の依頼が。ただし、その先のページは横線しかないただのノートです。つまり次回作は自分で書けと言っているわけです。
 最近こそ、「優れたゲームブックを作るには、小説とゲームの両方の高いスキルが必要だ」なんて小難しい話しがネットで出ますが、このノートに書かれたゲームブックは、「プログラムとかできないけど、ゲームブックなら一人でゲーム作れるぜ」とか「うまい文章とか書けないけど、ゲームブックなら○○へ行けって書くだけだから簡単だよな」という、昔感じていたゲームブックへの「俺でも書けそう」的な親しみやすさを感じさせるんですよね。

 今年はゲームブックの復活に尽力していた創土社の酒井さんの退社で、ゲームブックの今後はどうなるのかなぁ、と思わないでもなかったですが、「オレのRPGノート」を見たらなんか元気でてきました。
 ゲームブックってゲームとしてシンプルだし、誰でも思いつくし書けるから、ひょっこりいつでもどこからでも復活できるもんだなと。それでいてまだ「オレのRPGノート」のように新しいアイデアのゲームブックが登場する余地もあるんだな、と。
 年内の冒険記録日誌はこれでおしまいです。来年も楽しくゲームブックで遊びましょうね。


山口プリン |HomePage

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