冒険記録日誌
DiaryINDEXpastwill


2014年09月23日(火) 騎士と魔法使い 君はどちらを選ぶか? サラリンダ姫を救い出せ!(メーガン・スタイン H・ウィリアム・スタイン/近代映画社)

 ちょっと前の話しですが「サラリンダ姫を救い出せ!」を入手しました。今の私が欲しがっていた3大ゲームブックの一冊です。(残りは朝日ソノラマの「タイムバブルからの脱出」と「サンフランシスコ誘拐事件」。これが揃えば、一応ゲームブックの収集欲は満足する予定。)
 やー、これ本当に嬉しかったです。国立国会図書館にもない、本当に幻の作品でした。
 しかし、これが手に入れば騎士と魔法使いシリーズの日本版全8巻が揃うというコレクター心をくすぐる状態でなければ、ヤフオクでバカ高い値段出してまで手は出さなかったのに。10年くらい前は他の巻が、1冊1,500円程度で買えたのですが、今の相場では古本屋で掘り出し物として見つけたとかでない限り入手は勧めません。

 さて、過去の冒険記録日誌で他の巻の感想は全て書いていますが(バラバラなので日付は紹介しない)、このシリーズは伝説的な騎士と魔法使いが王の命令により、数々の冒険をするというストレートな内容です。文体もやや古めかしい、男らしく骨太といっていい世界観がステキなんです。短編といってもいいくらいの長さですが、物語の冒頭で主人公は、騎士と魔法使いのどちからから選ぶことができ、同じ事件を別々の立場で楽しむことができます。
 ゲーム性の方は最低。サイコロは使用しない代わりに、騎士がクライマックスの戦闘で「今日は何曜日か?」といった質問で戦闘の決着がつくとか(その結果、水曜日に遊ぶとゲームクリア不能とかいった事態は日常茶飯事)、魔法使いが呪文を唱えればランダムに1ケタの数字を選んで「3・7なら」魔法が失敗して自滅するとか(時を戻す魔法を使ったら、赤ちゃんになっちゃってENDとか普通の展開)、そんな調子で即ゲームオーバーが続くといった理不尽さですが、そこは世界観の魅力でカバーといったところ。そんなシリーズです。

 そして「サラリンダ姫を救い出せ!」はシリーズ3作目。
 タイトルからベタに、悪漢やドラゴンに誘拐されたサラリンダ姫を騎士と魔法使いが救出に向かう冒険かと思いきや、冒頭でサラリンダ姫が婚礼の直前に場内から忽然と消え去ったという宮廷内事件ものでした。
 さっそくヘンリー王から姫の捜索と保護を命じられた騎士と魔法使い。2人はサラリンダ姫の結婚を快く思わない人間が誘拐を企てたもので、犯人はまだ城内にいると睨んで、城内を捜索します。結婚相手である敵国の王子マーレイン卿(半ば政略結婚みたいなものですね)や、ヘンリー王の騎士で敵国とは徹底抗戦すべしなサイメリアンなど、容疑者として何人かがあげられています。
 なんとなくミステリー風味もある本作ですが、そこはこのシリーズですから、普通ではすみません。序盤に掲載されている城内の地図を見ながら、どの部屋から捜索するか選んでいくのが序盤の展開ですが、今の和製ゲームブックでは書けないだろうなーと思われる気ちがい老婆、なんでこんなところに?な封印されていた怪物、50年間も引きこもりしている男など、怪しい住民のいる部屋が盛り沢山です。
 そして今回も「読者の誕生日が偶数か奇数か?」で決着がつく、自分が生まれ変わらない限り絶対に勝てない戦いなんかもあります。
 それでもこの巻は、失敗してもやり直す機会があったり、勝てない戦いがあっても、それを避ける別ルートが用意されてあるなど、ゲーム的な理不尽さは他の巻に比べると少ないと思います。普通のゲームブックなら当たり前ですが、まさかこのシリーズでルールを守って、クリアすることができるとは……感動的でした。
 本作で印象的なシーンとしては、魔法使いが病気で我を失って、騎士と戦う展開ですね。騎士のとった解決策が、毒矢で魔法使いを射ると体の毒が中和されるという驚くべきもの。「あなた(魔法使い)自身が調合した毒だ。その毒があなたの病を消し去ることができればと思った」と騎士が解説していますが、毒を持って毒を制すとはいうけど、それありなの?
 あと楽しみにしていたサラリンダ姫のお姿ですが、終盤に登場するのみで、あまりセリフもなかったのが少々残念でした。(ちなみに8巻の「時空の支配者に挑戦!」にも姫は登場しまして、そちらではチャーミングな姫の行動を見ることができます。)
 それにしても城内の地図を見た時から思っていましたが、姫の部屋の隣が埋葬室って構造はどうなんでしょうねぇ。いちいちつっこんでたらキリがないんですが、そこも含めての本作の面白さってことにしておきましょう。


山口プリン |HomePage

My追加