冒険記録日誌
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2014年09月14日(日) ツァラトゥストラの翼(岡嶋二人/講談社)

 本格的ミステリーゲームブックという煽り文句付きのゲームブックです。
 最近はあっさりしたゲームブックばかり遊んでいた私としては、パラグラフ460というボリュームも久しぶりで、ミステリー部分だけでなく、ゲームブックとしても本格的に遊んでいる気分がしました。
 以前、Kindle本で途中まで挑戦してみたのですが、今回は文庫本版で最後までクリア。
 電子書籍版の時はパラグラフ移動が頻繁な割に画面切り替えがもたつくし、指が別リンクに当たって違うパラグラフに飛んだりと、操作にイライラしてしまい、途中で挫折したのです。それにアプリではなく、Kindle版だからしょうがないとは思いますが、せめてメモ機能をつけたりフラグ処理を自動化してくれないと、電子書籍版のメリットがないですわー。

 本書の主人公は、私立探偵の会社に勤める冴えない下っ端探偵です。鹿島清志という事業家から、値のつけようもない高価な宝石「ツァラトゥストラの翼」を見つけ出してほしいという依頼を受けて、捜査を開始するという内容です。「ツァラトゥストラの翼」は義父で資産家の鹿島英三郎が大事にしていたものですが、鹿島英三郎は何者かに殺され、ツァラトゥストラの翼」も盗まれてしまったのです。
 本書が独特で面白いと思ったのは主人公と読者が別人格で、主人公の脳内に語りかけて行動を指示していくという設定。
 何かあると「これからどうしよう。あんた(読者)ならわかってるんだろう?なあ、教えてくれよ。」などと聞いてきて、「どうして金持ちの家はこう広いんだろうね。おれ、疲れちゃったよ」とか愚痴をぶつぶつ言いながら事件現場を捜索する主人公が何ともいい味しています。
 あと、全ての場所や登場人物や証拠品など、大抵のシーンがイラストで表示されているのが地味に凄いと思います。ただ、本で豊富な挿絵で表現しているのが凄いのであって、電子書籍版だとTVゲーム感覚に近いから当たり前に感じるだけかも。
 ゲーム性としては、非常によく出来ていまして、他のよくある探偵ものゲームブックと違い、ゲーム中で主人公が勝手に推理して解決してくれることはなく、ヒントになりそうな情報をかき集めて、本当に読者が考えないと犯人を見つけられません。
 殺人現場でもある鹿島亭邸は広く事件と無関係の場所も沢山あり、また依頼の目的はあくまでもツァラトゥストラの翼を取り戻すことなので、犯人捜しを後回しにして秘宝探しを優先しても良いなど、行動の自由もそこそこあります。もっとも推理が間違ったり、無茶な行動をすると、ボスに怒られて仕事をクビになってゲームオーバーとか、必要な情報を取りそびれたり、反対に間違ったフラグを拾って終盤で手詰まりになるなどの展開も多く、クリアできるルートはある程度絞られてしまいましたが。
 あと秘宝を見つけ出すために、絶対に解く必要のある暗号が途中で登場するのですが、これが難しい。私はお手上げでした。巻末の答えを見ると、そう複雑な解法ではなかったのですが、きっとさらに数時間考えても自力ではわからなかったと思います。パズルとか好きな人ならわかるのかも。
 殺人犯探しについては、犯人の仕掛けたトリックを見破れるかが、解決のカナメなのですが。うーん、なんで犯人がわざわざ密室殺人にしようとしたのか、今でもわからない。被害者の自殺に見せかけようとしたわけでもないし、犯人側のメリットがないと思うんだがなぁ。
 また物語の登場人物に魅力的なキャラがおらず、みんなステレオタイプばかりです。もっとも、人間ドラマ的要素を排除して、純粋に推理ゲームとして楽しめるようにあえてそうした可能性はありますがね。
 そんな風に欠点をあげようと思えばいくつかあげられるとはいえ、このタイプの推理ゲームブックは他にはありません。本格的ミステリーゲームブックとしては及第点と思う作品でした。


山口プリン |HomePage

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