冒険記録日誌
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2014年09月01日(月) 闇をさまようもの(友野詳/創土社)

 「闇をさまようもの」とは、創土社から発売されているクトゥルー神話のオマージュ・アンソロジー・シリーズの最新作「闇のトラペゾヘドロン」に収録されているゲームブックです。クトゥルフファンでない私には、全体の3分の1しかないゲームブックパートの為に、値段も高い本を買うのはわりと辛いです。
 そんな思いで読んだ「闇をさまようもの」の感想ですが、うーむ。これは買って久しぶりに駄目な感じでした。まったく遊べません。
 ゲームブックとして悪いという意味じゃないんです。読み手を選ぶというか、クトゥルー神話を知っている人前提で書かれているから、予備知識のない私にはそもそも書いている内容の意味がわからないという状態なのですよ。

 ストーリー的にはのっけから世界中に天変地異が発生する中、主人公が輝くトラペゾヘドロンの中に吸い込まれてしまいます。そして精神的存在として?いろんなクトゥルー作品的な場面を体験していくという内容です。
 ゲーム性は、作者は友野詳さんということで半分予想はしていましたが、「ゾンビーズ?ゾンビーズ!−テキサス・ゾンビーズ ゲームノベル−」(2013年6月13日の冒険記録日誌を参照)のような新紀元社から出ているネオゲーム文庫のゲームブックシリーズと同じ仕様です。(つまり何か選択をする場面になると、6つ程度の単語の中からその状況に適した単語を2つ選んでそれに対応したパラグラフにジャンプするというもの。)グループSNEは本当にこのルールがお気に入りなんですね。私は正直飽きてしまって少々うんざり気味ですが。
 それでこの作品の場合、最初の選択肢が「はいよる混沌、顔のない悪魔めいた生き物、蛸を連想させる巨大な生物、ウミユリ状の知生体、のちに南極と呼ばれる大陸、あの強大な存在がおりたった海、月面にある夢の国」の中から2つの単語を選ぶという、いきなりマニアックなもので、これらの言葉の意味にピンとこない人は、この時点ですでにおいて行けぼりです。
 次々に切り替わる場面も登場する得体の知れない生命体達も、知っている人にはどんなシーンかわかるのだろうなぁ、と思うのみ。
 もっとも雰囲気自体はコズミックホラーという言葉が似合う、スケールのデカさがあっていい感じです。中には「シュゴスでメイドなテケリさん」みたいな、ライトノベルやらなんやらの二次創作ネタを仕込んでいるところもあって、クトゥルフがどっぷり好きならニヤニヤしながら楽しめる内容かと思います。

 ちなみに友野さんはゲームブック以外に、他にもクトゥルフ神話関連のTRPGやゲームブックのミニエッセー的なことも本書に書いていました。
 トラペゾヘドロンというと、私はゲームブックブームの頃に創元推理文庫から発売されていた「暗国教団の陰謀〜輝くトラペゾヘドロン〜」(2006年2月8日の冒険記録日誌を参照)を連想していましたが、これは友野さんも意識していたようで、今回のゲームブックをストレートな内容にしなかったのは、先行作品とネタがかぶらないようにしたかった的な事を書いています。
 だからといってこんなマニアックに走らなくても、と言いたいですが、一見さんを切り捨てたある意味いさぎよい作りともいえます。確かに、このシリーズを買う人は、大抵は熱心なクトゥルー神話のファンと思うので問題ないかもしれません。
 これから購入を検討している人は参考にしてください。


山口プリン |HomePage

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