冒険記録日誌
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2014年02月24日(月) 首都消失(雅 孝司/徳間書店)

 同名の小松左京の小説(&映画)を原作にしたゲームブックです。
 残念ながら、原作は私は知らないのですが、ウィキペディアで確認すると、原作のあらすじは「謎の雲が東京を覆って、東京とは一切音信不通になってしまった」というものですから、小松左京さんの作品に多い、もしもこうなったらどうなる?系のパニックものだと思います。(同類では「日本沈没」が有名ですが、私が読んだ中では短編小説の、一夜にして世界中の紙が消滅するという「紙か髪か」が傑作と思いますね。)

 本書は古本で入手しましたが、映画版「首都消失」のロードショー割引券が、紙のしおりとして本書に挿んでいました。タイアップ企画で登場したことがよくわかりますね。
 ウィキペディアの「首都消失」の項ではゲームブック版のことにも一言ふれてあって、ストーリーは外伝的内容だそうです。
 実際に本書を読んでみると、主人公はオリジナルキャラで職業はなんと怪盗という妙な設定です。
 その名前も「竜坂有瀬(たつさかあるせ)」。
 たつさかあるせ>あるせたつさか>あるせ・りゅうはん>アルセーヌ・リュパンとまことにふざけた・・・・・・・・・このふざけた名前は前に見た覚えがあるぞ!

 朝日ソノラマ刊ハローチャレンジャーシリーズの「10億円を奪え!」の主人公じゃないか。
 確認すると作者は同じ雅孝司さんだし、読んでいると「先日は10億円をせしめたそうじゃないか」みたいな会話が登場するしで、間違いなく「10億円を奪え!」の続編です。

 これは・・・・・・原作つきでありながら、雅考司さんは自分のオリジナル作品の続編を作ってしまったということでしょうね。
 調べると「10億円を奪え!」の朝日ソノラマは、本書が出るころにはゲームブックから撤退しています。ハローチャレンジャーシリーズは15巻で終了です。
 可能性として竜坂有瀬を主人公にした続編を作るつもりだったが、レーベルがなくなった。そこに折よく当時映画化などで人気があがった「首都消失」のゲームブック版の企画が徳間書店からでた。これ幸いと舞台設定以外は「10億円を奪え!」の続編にしてみたというところでしょうか。もちろん露骨に続編とは書かれていないので、わかる人だけわかる感じですが。
 新書サイズといい、横書き文章といい、ボリュームといい、本の装幀が朝日ソノラマのゲームブックと似ているので、実質的にハローチャレンジャーブックシリーズの第16巻といっていい出来と思います。このシリーズのファンは要チェックの一冊かも。
 小松左京さんが当時ご存じだったのかは知りませんが、この時代のおおらかさを感じさせてくれます。

 ゲームブック版の中身ですが、簡単に言うと謎の雲を除去しようとする研究者達に「10億円を奪え!」の主人公一味が怪盗として協力するという内容でした。
 遊んでいて小松左京らしさを感じることは皆無だったので、たぶん原作の持ち味とは別のベクトルのストーリーになってるんだろうなとは想像できますが、この研究員らは原作の登場人物なのかな。
 ゲーム性は前作とは違って、前半はほぼ一本道の一方向システムです。双葉文庫の探偵物ゲームブックのように、基本的に選択肢を総当たりしていけばストーリーが進行していきます。
 後半はある企業ビルに潜入して雲の除去に必要な機密情報を盗み出す、という双方向システムの迷路ゲームでした。
 前作の欠点だったボリューム感のなさは消えているのですが、普通のゲームブックになってしまったな、というのが感想。悪くはないのですが、前作の方が自由な感じで楽しめた気がします。
 ルール面では、メモを使わなくてすむ簡潔さはあいかわらずですが、所持品を記憶する必要があったり、ちょっとだけ要素が増えています。今作だけにある時計を使った乱数処理ルールは、サイコロを振るという面倒さがないので、当時よりむしろ現代向きかも。
 ゲームは簡単にクリアできましたが、終盤にある目的の品がどれなのかを見分ける選択肢だけは厳しく一度ゲームオーバーになりました。
 ヒントになりそうな箇所もあったのですが、本物、ダミーどちらの暗示ともとれるので判断材料不足なんですよね。恐らく、ほとんどのプレイヤーはここでつまづくんじゃないでしょうか。他に見逃したヒントでもあるのかな。


山口プリン |HomePage

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