冒険記録日誌
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2013年11月28日(木) ウィップアーウィルの啼き声(くしまちみなと/創土社)

 引き続きクトゥルー神話のオマージュ・アンソロジー・シリーズから紹介。
 「ウィップアーウィルの啼き声」は、「ダンウィチの末裔」の中に収録されているゲームブックです。
 ルールの特にない純粋な分岐小説タイプで、ストーリー性を重視した内容だからなのか、1パラグラフ毎の文章は長く、したがってパラグラフ数は少なく75しかありません。
 シンプルすぎて物足りなさもあるものの、このシリーズは私とは逆に、ゲームブックに興味のないクトゥルーファンが買うことだって多いわけで、そういった方にはこのくらいの方が読みやすくていいのかも。

 あらすじは、アメリカの小さなTV番組製作会社で働いている主人公とその同僚らが、日本のTV番組製作会社から依頼を受けて、日本人タレントと一緒に1950年代に廃村となった村の跡地を取材に行くというもの。
 1920年代に怪奇現象が起こり始め、行政が気づいたときには廃村となっていたとの事で、森林に浸食され今では地図に名前も載っていないそう。
 王道のホラーといいますか、謎めいていていいです。日本のTV番組製作というと、懐かしの川口浩探検隊を一瞬連想したのですが、それじゃホラーにならないので必死で封印しました。
 物語序盤は、分岐のないパラグラフジャンプが多く続き、実質的なゲームブックパートは問題の廃村にたどり着いてからです。廃村に入ってからは疑わしい人物や怪異が次々に出てきて、パラグラフ数の少なさゆえなのか、あっというまに最後まで進んでしまいます。
 ホラーもののゲームブックにしては難易度は低く、ハッピーエンドには苦労せずにたどり着けたので、ボリューム的にも一巡遊んだだけではあっさりした印象です。
 もちろんホラーですから、グロテスクなバッドエンドも一つのエピソードとして、全ての展開を読みつくして味わいつくすくらいの気持ちで全部読みましたが、私はもっと静かに忍び寄るようなホラーが好きなので、むしろプロローグ部分にあたる村にたどり着くまでの不安だけを感じさせる序盤のシーンの方が好きだったかなぁ。


山口プリン |HomePage

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