冒険記録日誌
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2013年11月27日(水) バーナム二世事件(フーゴ・ハル/創土社)

 前回も書いたことですが、最近、創土社が次々に出しているクトゥルー神話のオマージュ・アンソロジー・シリーズというものがあります。
 3人の作家による3作品が収録されているのですが、このシリーズにゲームブックが収録されていることがあると知り、「ホームズ鬼譚〜異次元の色彩」「ダンウィチの末裔」「超時間の闇」を購入しました。
 収録されているゲームブックは、雑誌ウォーロックに収録されていたゲームブックくらいのボリュームがあります。
 当然ながらクトゥルー神話のファン向けの本であるうえ、本の定価が高めなので、ゲームブック目的だけで購入しようという人には、コストパフォーマンスが悪すぎるので、残念ながらあまりお勧めできません。
 といいつつ、山本弘さんやフーゴ・ハルのゲームブックとなれば、それでも買ってしまう私がいるわけですが。


 さて、3つのゲームブックのうち、最初に遊んだのが「バーナム二世事件」で、これは「ホームズ鬼譚〜異次元の色彩〜」に収録されている一作。
 なぜこの作品から遊んだかというと、本書はクトゥルー神話とシャーロックホームズと掛け合わせた作品ばかりで、クトゥルー神話が苦手な私でもシャーロックホームズのパスティーシュ作品として楽しむことができたからです。
 非科学を信じないはずのホームズにクトゥルーの世界観が合うのかという疑問も感じましたが、考えると原典にも「這う男」なんて奇妙な話しがあったので、案外ありなのかも?

 ゲーム内容の話しをしましょう。目的はバーナム二世という人物が殺されたので、その犯人を探すというものです。主人公、つまり読者はワトスンの立場でプレイします。
 ホームズは別行動で捜査をしているようで、プロローグとエピローグ以外にほとんど登場しないのが残念なところ。しかし、ホームズものっぽい雰囲気とクトゥルーものの重苦しい雰囲気がうまく融合していて、パスティーシュ作品としては悪くありません。
 一方でこの作品をゲームブックとして見ると、システムが独特です。まず選択肢が存在しません。
 バーナムの屋敷の見取り図を見て、部屋に書いてある番号のパラグラフに飛べば、その部屋の捜索をワトスン達がする。終われば見取り図に戻るの繰り返しが基本です。
 さらに関係者の証言で判明する登場人物や地名や団体名などにも、文章に「小包はアーカム(68)から送られたものだ」という風に番号が振られているので、気になるならその番号のパラグラフに行けば、その人物に聞き込みに行ったり、その土地の噂を調査したことになって新たな情報が入ってきます。おおまかなストーリーの流れは、途中で脅迫を受けるなど一部のシーンを除いて存在しません。
 つまり、バラバラに各パラグラフに情報がちりばめられているキーワードを、聞き込みや現場調査などで芋づる式に発見して情報を整理し、読者自身で推理する必要があるわけです。
 そして真相を発見したと確信すれば、<解決編>のページに移動してホームズの出した正解と答え合わせをするというわけです。

 フーゴ・ハルさんは、二見書房より出していた「シャーロック・ホームズ 10の怪事件」などのシリーズも手掛けているので、それらを遊んだことのある人なら、それに近いゲーム性と感じるかもしれません。
 私はどちらかというと、パズル雑誌クロスワードランドに、以前は3ヶ月に1回のペースで掲載されていた「シャーロック・ゲームズの冒険」(奥谷道草作、つまりフーゴ・ハルのことです)を思い出しました。

 事件は不気味な雰囲気を醸し出しているものの、犯罪そのものは真っ当な自然現象で説明可能なものなので、ちゃんとミステリーゲームブックとして成立しています。登場人物達にも一癖あり、それが関連しあっていることもあるので、事件に関係ないひっかけの捜査の箇所でも、つい読み込んでしまいました。
 ラストはやはりクトゥルー神話ものだったなと思わせる、なんともいえない劇的な終わり方です。
 あと、想像はついていたのですが、フーゴハルさんのイラストは、クトゥルーものにとてもよく合うことがわかりました。挿絵が本当にぴったりですよ。

 最後に私のプレイ状況の報告です。
 本来この手の推理物は不得手なのですが、細かい犯行の実行手段はよくわからなかったものの、基本となる殺人のトリック部分だけは見事当たっていました!
 実は馬車のくだりを読んでいるうちに、10年前くらいのゲームズの冒険(2003年02月28日の冒険記録日誌参照)で、これに近いトリックがあったのを思い出したからなんですがね。(汗)


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