冒険記録日誌
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2013年08月12日(月) 織田信長 名将の決断(オフィス・イディオム/学研)

 発行日が2010年10月ですから最新刊とまではいきませんが、今回も最近になって新品で購入できたゲームブックの紹介です。
 タイトルだけで想像がつきそうですが、戦国時代を舞台に織田信長を主人公にしたゲームブックです。
 実はゲームブックで戦国ものというのはありそうでないですね。ゲームブックブーム当時も学研あたりくらいしか出してなかった気がします。と、思ったらこの本も出版社は学研でした。さすが学研。

 内容は信長のうつけといわれた少年時代から、京にのぼって、やがては天下に号令をかけるまでのストーリー。桶狭間など、有名どころの戦いは再現していますが、安土桃山城を建築するあたりで終了しているので、本能寺の変はなし。エピローグ後に信長のその後として参考に紹介している程度です。
 なんとなくゲーム性よりは教育向けな内容かなーという、予想ができていたのですが、やっぱり想像どおりな出来でした。
 一応、ちゃんとしたゲームブックの体裁は整っていますが、展開が史実通りのほぼ一本道です。
 史実と違う選択肢を選んだ場合は、家臣の不興を買ったり、計画がとん挫したため反省するなどして、結局同じルートに戻されます。
 戻らない時は戦に負けて切腹して死亡とか、その後の信長はこのような生涯を送りましたと締めくくられるとか、いずれにせよ即終了。
 歴史にifはないとはいいますが、ゲームくらいifの展開を楽しみたいところなのです。それがまったくないのはどうもね。
 残念ながらゲームブックとしては、少し前に書いた「子どもなめるな!」というレベルと同じと言わざるえません。

 でも、ここは単なる批判はしないのがモットーの冒険記録日誌。
 そこで視点を変えて、本書はゲームブックの形式を利用した歴史学習本と見るとどうでしょうか?
 この作品では史実通りの選択肢を選ぶとポイントがつき、その総得点が評価されるシステムです。つまり読者が信長に代わって選択するというより、信長が歴史でどう決断してきたかを知ることが目的なのです。
 これはクイズ形式でも十分代用できそうですが、ゲームブックという形の方が、信長視点になれるという点で選択にリアリティが増すので覚えやすいという効果はあると思います。
 また新しい武将や場所が登場すると、欄外に解説が出てくるのはとても覚えやすい。小中学生向きの内容ではあるので、もう少し掘り下げて書いて欲しいと感じる個所もありましたが、信長の伝記として問題ない出来とは思います。

 などと、ほどよくフォローしたところで、また一点不満を。事前の情報だけでは判断の難しい選択肢はやめてほしい。
 例えば桶狭間の戦いの直前、信長は策の出ない会議を打ち切って家臣たちを下がらせた後、戦うか降伏するか籠城するかの3択があるのですが、史実を知っていれば「戦う」が正解とはわかります。しかし、事前の情報ではただ戦況が圧倒的に不利としか書かれていません。援軍がくる見込みとか、今川軍の様子とかヒントを入れてほしかったところです。
 小中学生向けならいろいろ詰め込みすぎるのも良くないと判断した可能性もありますが、んー、やっぱり本格的な戦国ものシュミレーションゲームというものの実現は難しいものでしょうかね。


山口プリン |HomePage

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