冒険記録日誌
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2008年07月27日(日) |
青竜王の伝説(小野勝弘/朝日ソノラマ) |
この作品。プロローグが、今の宇宙が誕生する以前に、かつて別の宇宙が誕生していた、というデカイスケールから始まっています。なかなか面白いので要約して紹介します。 その宇宙はビックバンもなく、太陽系ほどの大きさの空間に膨大なエネルギーに満ち溢れていました。やがてそのエネルギーは竜の形となり、さらに長い時間のうえに、竜は意識をもち一つの生命となったのです。 そのときには、竜のウロコの一つ一つに人間が住みつき、いくつもの国が興っていました。竜は青竜王として、慈愛と正義を全ての世界に注ぎ、平和な時代が続きました。 しかし、ある日突然、青竜王の魂が金色の月となって、その体を離れてしまったのです。幾多の国々で戦乱がおき、多くの国が滅びてしまいました。滅びた国はじわじわと大地から噴き出す瘴気の海に飲み込まれていきました。 生き残ったわずかな国も、青竜王の使途と自称する妖しい魔道士たちに支配されていきました。その魔道士たちから自由を取り戻す戦いは、1万年も続き、人々が魔道士たちを追放したときには、青竜王の上にある国は、わずかに4つ。竜の胸の位置にあるグランクル、トラループ、ファ、それに竜の尾の方角にある大国イームだけとなったのです。 今となっては、竜の胸の三国とイームの国の間には瘴気が満ちており簡単には行き来できません。わずかに竜の回廊と呼ばれる細い道が、三国とイームとつなぐ唯一の道として知られていますが、竜の回廊には妖魔が跋扈しており、さらには追放された魔道士が潜んで、旅人を捕まえては怪しげな魔術の実験台にしているとの噂まで流れ、今ではこの道を通る者もめったに見られなくなったのでした。
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テーブルトークRPGの世界設定になりそうな、なかなか壮大な舞台じゃないでしょうか。まあ、人間が普通に活動できる地域がわずか4つの国しかないのは、少々さみしい世界かもしれませんがね。 さて、この冒険の主人公はファの国のバン・ジョーという王子です。どこからか突然現れて襲いかかってきた混沌の騎士と名乗る謎の軍隊によって、ファの国は危機に瀕していました。混沌の騎士はファの国を明け渡すか、「月の石」というものを渡すかしないと皆殺しにすると脅してきたのです。 武力では到底かなわず、「月の石」もファにはありません。「月の石」は、謎の国イームの国宝になっているとも、竜の回廊に存在するともいわれる未知の存在なのです。 こうして主人公は、「月の石」を探しに冒険に旅立つわけですが、なぜわざわざ王子自らがそんな危険な旅に旅立つのかの説明はなし。もっとも王子といっても、第三王子らしいので、ここで手柄を立てて一発逆転で王権をわが手にという野望があったのか…は定かではありません。 ちなみに主人公には、技術ポイントと体力ポイントの2種類の設定がありますが、戦闘システムもなく、また能力値の数値によって分岐する機会もそれほど多くなかったので重要度はあまり高くないと思います。あとサイコロは使用しますが、運試しのような使い方しかしません。(序盤あたりの運試しで、3分の1の確率でクリアに必要なアイテムが入手できなくなる箇所があるのは問題ありと思いますが) とにかく王家の聖獣であり風より速いとされる麒麟にのって、主人公は旅立ちます。グランクルやトラループで情報収集したあと、竜の回廊にいどむわけですが、闇の瘴気に囲まれた場所という触れ込みどおり、オドロオドロしい感じです。しかし、こんなところでも謎の美少女が登場したりします。やはりこの手の冒険には、お約束だからなのでしょうか。 冒険はそんなに難しいこともなく、エンディングまでたどりつけました。でも終盤はえらく唐突に終わってしまった印象です。 謎の大国イームの描写も物足りないし(実はイームまで到着するパターンは、バットエンド確定ですが)、倒したとはいえ混沌の騎士の正体は謎のままだし、謎の美少女も世界を救う鍵となると予言されながらも、この冒険では全ての謎が明かにされず、消化不良な感が否めません。 もっともこれらは、エンディングで主人公本人も気にしている描写はあります。これは続編を睨んだ伏線だったのか、単に締切かパラグラフ数が足りなくなって、尻切れトンボ状態になったのかは謎です。どちらにせよ、この作品は朝日ソノラマのゲームブックシリーズ、ハローチャレンジャーレーベルの15作目にして最終巻なので、この作品の続編は作られていません。 雰囲気は嫌いじゃないけど、もっと作りこんでほしかった。そんな感じの作品でした。
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