冒険記録日誌
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2008年07月26日(土) |
惑星連合の危機(高橋昌也/朝日ソノラマ) |
朝日ソノラマのゲームブックシリーズ、ハローチャレンジャーレーベルの第4作目です。 このレーベルは、アイドルもの、ファンタジー、インディジョーンズ系といろんなテーマのゲームブックを発表していますが、この作品は宇宙戦争を主題にしたSFというかスペースオペラもどきです。 作者の高橋昌也さんは、ウィキペディアなどで少し調べてみたところ、この作品を書いた同時期に「MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝」というガンダム漫画の原作を担当したことをはじめ、他にもいくつかのガンダム関連の著作を手がけた方らしく、このテーマに関してはベテランみたいですね。ちなみにこの作品には、モビルスーツはでてきませんのであしからず。
さて、ストーリーですが、主人公は弱冠18歳にして、オンボロ船ながらもフリゲート艦「ネルソン」の艦長という設定です。 この世界では、惑星連合と惑星連合の征服を企むグルマン星が、戦争を繰り広げています。そんななか、グルマン星が建造した「最終要塞」とよばれる巨大戦闘艦によって、惑星連合の精鋭は次々にやられていったのです。 そこでついに最後に残った「ネルソン」に出撃命令がくだります。司令内容は、グルマン星のレジスタンス軍が製作した、対「最終要塞」用の武器と装備を回収すること。 そんなわけで、主人公はイングラウス、ブランチ、ボリシュという3つの惑星を行き来して、各地に散らばった武器と装備を捜索していくことが冒険の中心となります。各惑星を探索するときは、フリゲート艦を宇宙空間に残したまま、3人が定員の小型着陸機で下船します。このとき主人公以外に、”交渉術”や”戦闘”など別々の得意分野をもつ4人の部下の中から2人を選んで着陸する必要があり、このあたりはスティーブジャクソンの作品「さまよえる宇宙船」を思い出させるルールです。もっともこの作品には、戦闘システムも能力値の管理も存在しないので、ゲームとしては簡単。メモを取らずに遊ぶことができます。 余談ですが本書のあとがきによれば、電車の中でも遊べる作品作りを心がけたそう。でも、このゲームブックで使用している乱数処理の方法は、やたらパラグラフ移動が必要な代物で面倒くさくてかなわないです。あとがきでは、一般的なゲームブックによくある本の各ページにサイコロを印刷する方法に対して、「その箇所を覚えておいてから、一度本を閉じて、再びページを開き印刷されたサイコロを読む。そして、この操作を数回続ける。こういう中断が本としての流れを阻害しているかという点を考えてみてください」と書かれています。ゲームブックの歴史でも初期の作品だけに、まだページにサイコロを印刷してパラパラめくるという発明がまだなかったのですね。ゲームブック製作に試行錯誤している様子が伺えて興味深いです。 話しを戻すと、主な舞台となる3つの惑星は、たぶん普通はイングラウス星から探索を始めるとは思いますが、実はどの星から探索してもよく、それぞれの惑星で武器と装備を回収する方法はいくつも用意されています。また全ての武器と装備が揃えることができなくても、最後の戦いにおいて乱数処理で高い目がでればエンディング到達は可能。おかげでゲームバランスが易しめに見えますが、かなり自由度の高い冒険ができる内容になってます。 ただ後半になると自分の能力や部下を使うときの描写が、手抜き気味になってくるのが気になります。あと主人公がとにかく真面目な性格で、宇宙船での戦闘に負けて行き詰まると、とすぐに自爆スイッチを押してENDになってしまうパターンが多いのには、ちと苦笑。 まあそうはいっても全体の感想としては、世界観もちゃんとしており場面描写もうまく読みやすいです。同じ作者が前に書いたゲームブック、「出発!スターへの道」(ハローチャレンジャーレーベルの第1作目。2002年10月の冒険記録日誌に紹介済)よりは格段に出来がいいと感じました。さすがに得意分野がテーマだと手馴れていますね。
最後にバグの訂正を。 パラグラフ203で「通常空間へ転位する。→103へ」は「→195へ」が正解です。これで全ての武器と装備が揃えることができるでしょう。
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