だからなに。
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空港勤務になって、仙人様もいる店舗で働くようになったけど 仙人は壁に沿ってケースが並ぶ方 わたしは店内通路を挟んで内側の、島のようになっている方にいた。 だから仕事中はほとんど接触することがなかった。 そばに寄ることがあるのは休憩時間ぐらいなものだった。
人見知りはあまりしない方だと思っているけど 自分から話し掛けたりするタイプでもないから、 新しく来たわたしに興味を持ってちょっかいを出してくれる人以外は あまり話すこともなかった。 わたしがいる方には、仙人の仲良しくんがいて 彼はよくわたしにちょっかいを出していたから すぐ仲良くなった。 年も彼がひとつ上で近かったから、話も合う。
接触することがほとんどなかった仙人の第一印象はそれほどよくなくて 向こうも同じような印象を持っていただろうと思う。 話すようになるまでは「あの人嫌い」と思っていた。
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メーカーではなく、空港のアルバイトとして来ていた、 後に同棲することになる彼は同い年だった。 もう仙人ともすっかり友達になっていた頃で その彼となんだかいい感じになっていくわたしを 仙人は同僚として冷静に見ていて、 同棲をやめて別れて出ていくことになった時に それまで何度か相談したこともあって 「ほらなー こうなると思ってたんだよ俺は」と言われた。
そういう相談をしているうちに いつの間にか好きになってしまうことは一般的にもよくあることで 例に漏れず自分もそれに当てはまってしまった。 だけど友達でいるのが楽しくて、 好きだけどまだ友達の域を出ないでいた。
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男で絶叫マシンが好きな人というのは周りにあまりいなくて、 ある日、休憩時間に仙人と「遊園地に行こう」と話していた。 幸いなことに仙人はそういうのは全然平気で乗る人だった。
友達のまま迎えた「絶叫マシンに乗ろう」の日。 少し雨が降っていて、目的は果たせなかった。 行ったのは後楽園ゆうえんち、 屋内コースターがあるのでそれに乗ってきた。 ふたりともぺらっとしているから 硬いシートの背もたれに骨がごつごつ当たって 「痛いよこれ!」とずっと言っていた。
雨の遊園地でなんとなく遊んで、夕方から上野に行って ふたりで飲むことになった。 何を話したのかちっとも覚えていない。 覚えているのは、 仙人はおばあちゃんっ子で、女の子には優しくするものだと教えられて それが当たり前だと思って育ってきたということ。 わたしはその日、初めて「女性」として扱われたような気がしていた。 この人って優しいな、と思ってしまった。 それまでは、男の人になりたいという憧れもあって いつも男っぽくふるまったりしていて 男連中からは「仲間」として認識されることが多かった。
お酒を飲んで酔っ払っても、前の彼氏とつきあっていた頃は 必ず家まで送ってくれて、それに慣れてしまっていたから その日はひとりで帰るのが急に怖くなって 送ってもらおうかとも思ったけど、家は逆方向で遠い。 じゃあしょうがない。泊まっていく・・? その夜、仙人と初めてセックスをした。
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