酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEX|past|will
2007年02月08日(木) |
『輪 RINKAI 廻』 明野照葉 |
香苗は娘・真穂を連れて新大久保にいる母・時枝の元へ逃げ出してきた。茨城の名家に嫁いだ香苗は姑の真穂に対する虐待とも言える躾によって真穂が歪んでいく恐怖に耐えられなかったのだ。香苗と時枝は決してうまくいっていなかった母娘だったが、孫の真穂の美しさ愛らしさを目にしたら、母・時枝も相好を崩すだろうと思っていた。だが、真穂を見た途端に時枝の顔は能面のように凍りついてしまった。そして香苗が働きに行っている間に時枝と真穂のふたりは・・・!?
第七回松本清張賞を受賞された明野照葉さんの名作です。明野さんの描かれる物語には血や因縁がテーマとなることが多いようです。この『輪 RINKAI 廻』はまさに血と因縁に絡め取られた女たちの物語です。こういう陰湿で悲しいモノは日本ならではの血脈のような気がします。だから好きなんですよね。明野照葉さんって。この物語も何度読んだかわからない。でもまたきっとふと読み返さずにいられない。好きな物語、名作と言うのはそういうものだなとしみじみと感じるのです。オススメです。
「二十五時は、人それぞれちょっと違うんじゃないのかな。私にとっての二十五時は、いわば諦めの境地よ。出口のない暗いトンネルの中で、もう出口を探すのなんかやめよう、死ぬまでトンネルの中でいいじゃないか、っていうような」
『輪 RINKAI 廻』 2000.6.30. 明野照葉 文藝春秋
|