酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2007年02月07日(水) 『棲家』 明野照葉

 洋香は広島から東京に出て7年経った。洋香の生まれた日之影は山の中で狭い地域。そして洋香は自分の受け継いだ血に悩み、苦しみ、東京へ逃げ出したのだった。でも東京で逃げるどころか捕まってしまった。自分の血に運命に宿命に。洋香には自分がなすべきことがあったのだ。そして友人を救おうと・・・

 とても好きな本というのは不思議なものだなぁと思います。読むたびに心情が変化しているからか、思い入れや読み方も変化してしまうのです。この『棲家』も何度読み返したことか。今回は特に洋香が気になって仕方なかったです。思うところがあるせいかしら。生きていると様々なものに翻弄されるものだなぁと思います。望むと望まざるとにかかわらず、色んな目に遭って・・・それでも生きていかねばならない。洋香は友人の危機に遭遇し、己の生きる道を確信します。かわいそうだケレドモ・・・それが洋香の行くべき道だったのでしょうね。洋香ガンバレ。そして・・・彼女達のその後を知りたいのですよねぇ。物語の終わった先にはいったい何があるのだろう。物語は終わらない。自分の心であれこれと想像して妄想して物語が続いていく。これすごくオススメですv

あなたもその血と力を受け継いだばっかりに、これから悩んだり苦しんだりすることがあると思うの。だけどね、人間どんなに努力しても、変えられないことというのは、やはりあるのよ。いくら不公平だと嘆こうとね。だって、生まれてきた時のことを考えてみてよ。何も知らず、何ら意志もなく、命を授かって、この世に生まれてきた訳じゃない? 人生なんて授かりものなのよ。何かはっきりした役割を与えられている人もあれば、はっきりとした役割が定められていない人もいる。役割がないならないでそれでいいの。それもまた自分で洗濯することを許された、人間のひとつの生き方だから。でも、もし、これが自分の定めなのだ、これが自分に与えられた役割なのだということに気づいた時は、それから目を背けてしまっては駄目。現世的な常識から見れば、自分の定めや役回りは、損なものと思えることもあるかもしれない。だけど、流れに抗えば抗うだけ、幸せじゃなくなるということもあるのよ

『棲家』 2001.8.18. 明野照葉 ハルキ・ホラー文庫



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