酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEXpastwill


2005年10月19日(水) 『憑神』 浅田次郎

 別所彦四郎は入り婿先から離縁され、兄夫婦と老いた母のもとへ転がり込んでいた。文武に秀でながら次男坊であるがゆえに耐えねばならぬ境遇。ある夜、酔っぱらった彦四郎は転がり落ち、どうしてこんなところに・・・というような祠を発見。酔いも手伝ってその稲荷の祠に手を合わせてしまう。そして現れた神様は貧乏神だった・・・!?

 浅田のオッサンならではの人情あふるる時代物コメディでありました。時代ゆえのしきたりや制度に翻弄される優秀な人材の彦四郎。彼が茶目っ気を起こして拝んだ神様は三巡り・・・三度巡り来るので、貧乏神だけでは終らない(笑)。日本人なら誰でも知ってる御馴染みの、そして嫌われ者の神様たちがなんともユニークないでたちで出現する。こういったあたり、浅田のオッサンの本領発揮だとしみじみ笑えました。
 ただただ面白おかしく笑えるだけでなく、己が信じて甘んじてきた価値観が壊れていき、彦四郎が苦悩する様には一緒になって考え込まされてしまいます。こういうとこもウマイんですよね。ツボをしっかり押されてしまう。時代や周りに翻弄されながらも、己を見つけるラストの彦四郎の神々しさは、神様をも越えてしまう「己を信じて生きる姿」を見せ付けてくれます。喝采v

 人間が全能の神に唯一まさるところがあるとすれば、それは限りある命をおいて他にはあるまい。限りあるゆえに虚しい命を、限りあるからこそ輝かしい命となせば、人間は神を超越する。

『憑神』 2005.9.20. 浅田次郎 新潮社



酔子へろり |酔陽亭酔客BAR
enpitu