酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2005年09月10日(土) 『その日のまえに』 重松清

 「その日」、自分がこの世を去る「その日」、大切な人がこの世から消える「その日」。自分が愛する人が大切な人が思いがけず早くこの世界から去ってしまう。それは決して特定の誰かに起こることでなく、誰にも起こりうる哀しいこと。「その日」をどう迎えるか、「その日」のあとにどう生きるか。そういうことを切々と教えてくれます。
 私が一番好きだなって思ったのは「ヒア・カムズ・ザ・サン」。母がまだまだ頼りない息子を残して先に逝かなければならなくなった物語。先に逝く人も苦しいけれど、頼りにしていた母親を失うことに呆然とする息子の動揺や成長が微笑ましい。人は誰かが死のうとも、残された者は生きていかなければならないのだから。

 やはり恋旦那を若い時期に亡くした人間としては、こういう物語は激しく心に響きます。でも私も「その日のあとで」いろんな成長をした気がします。生きるということは死と隣り合わせ。自分の死が訪れる「その日」まで、周りに死が訪れようとも自分の「その日」を早めちゃいけない。生きるということはそういうこと。そんなふうに思って生きています。

 泣くなよ、と自分に言い聞かせた。こんなところで泣くのは、迷子になった子どもだけだ。俺はもう子どもじゃない。わんわん泣いておとなに助けてもらうなんて、できない。大事な人とはぐれてしまったら、自分の足で探しに行くしかないのだ。

『その日のまえに』 2005.8.10. 重松清 文藝春秋



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