酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年11月21日(金) |
『なくさないで』 新津きよみ |
永井純子は、平凡ながら幸せな結婚生活を送っていた。ある日、差出人不明の郵便物が届く。中には真珠のイヤリングの片割れが入れられていた。純子の脳裏に甦る苦い過去。いったい誰がどうしてこれを送ってきたのだろう。疑心暗鬼になる純子だが・・・。
ううーっ。いやぁ〜な読後感でした。そしてそれこそが新津きよみさんの狙い目なのだろうなぁ。誰だって過去に忘れてきたもののひとつやふたつやみっつくらいは持っていて、きっとあえて思い出したくないシロモノもあるでしょう。そんな過去の亡霊が今を生きる自分に突きつけられたら、それは疑心暗鬼にもなろうってものですよー。 純子だけでなくオムニバス形式で、過去からの贈り物を受け取る人たちはそれぞれの生活に波紋が広がり、破綻してしまう人まで出てきてしまいます。問題はこの送り主の悪意の塊です。いたずらに人の生活を脅かすものではないし、人を羨むものじゃないなー。 ふと私にとって怯えてしまう過去からの贈り物ってなんだろう、と考えてしまいました。あれかしら。いや、あっちかしら・・・。
ー自分の気づかないところで、誰かをひどく傷つけている。何げない言葉に傷つく人間がいる。 ー人間の記憶とは、ときとしてひどく残酷なものだ。凶器にもなり得る。
『なくさないで』 2002.6.20. 新津きよみ 詳伝社文庫
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