酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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「尻」 小出弘恵は父親の多額な寄付金のおかげで東京の有名な私立高校へ行くことになる。はじめての寮生活。お嬢様育ちで他人との共同生活初体験の弘恵は少しずつ心と身体のバランスを崩していく。他人の目と耳を意識するあまり、トイレでの排便もままならない。その結果、排便に痛みを伴うようになる。同時期、いっしょに入浴した女性の心無い一言から弘恵は・・・。
このタイトルの『躯(からだ)』の漢字は身の横は本当は‘區’です。どうやってもこの組み合わせのカラダと言う漢字が出せなかったので、躯で代用させていただきました。すみません・・・。 さてこの物語は、カラダの中のさまざまなパーツをテーマに据えた物語たち。「臍」「血流」「つむじ」「尻」「顎」の5つです。それぞれ意外だったり、異常だったり、せつなかったりしますが、私は一番身につまされてしまった「尻」をあげてみました。女の子は同性の心無い言葉であんなに狂ってしまう可能性があるから。ううう。かわいそうに・・・。 つくづく思うことは、人間のコンプレックスや趣味嗜好はカラダによってもそれぞれだったりするのだろうなぁ、と。最近乃南アサさんの物語をがしがし読んでいて、ご機嫌ななめな女性をセックスで懐柔するシーンによく遭遇します。セックスってカラダのホルモンバランスに関係してくるし、大切ではあるけれど、それだけで女性がるんるんるんってなっちゃうってイメージはいやだなぁ。でも無きにしもあらずな事実だしなぁ。所詮人間なんてその程度のものなのか?
何だか馬鹿馬鹿しくなった。自分の自由になることなど、何一つとしてないような気がした。残された自由はただ一つ、自分の肉体そのものだ。
『躯』 1999.9.30. 乃南アサ 文藝春秋
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