酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年11月01日(土) 『南方署強行犯係 狼の寓話』 近藤史恵

 刑事になるのが夢だった。その夢が叶い、南方署刑事課配属が決まった會川圭司ははじめての現場で大失態をやらかしてしまう。そしてコンビを組まされた相手が黒岩と言う女性刑事だった。彼女はどうやら刑事課では少々浮いているらしい。ふたりが任された事件は夫が殺され、失踪した妻が疑われていると言うものだった。家庭内暴力が絡んでいるらしい事件の真相は・・・。

 近藤史恵さんと言う作家さんは、どんな設定の物語を展開しても必ず近藤史恵でしか描けない世界にしてしまわれますねぇ。ほぅ(ため息)。大好きなんですv 近藤史恵さんの心にイタイこの世の中の物語が。
 今回は不思議な昔話(童話らしいですが)と現実の家庭内暴力が同時に進行していき、最後に見事に交錯します。本の裏表紙に有栖川有栖さんが「近藤史恵さんの書く小説は、しばしば痛くて切ないが・・・」と言葉を寄せられていますが、本当にその通りだなぁと思います。今回ははじめて警察小説に挑まれたことが話題になっていましたが、近藤史恵ワールドにそういうジャンル分けはまったく関係ないな、と感じ入りました。登場人物がそれぞれ素敵ですが、中でも圭司を心配して連絡をたびたび入れてくる‘美紀’ちゃんなる女性が最高にキュートでした。

「つらいときは、だれだって弱音を言いたいし、泣きたいことがあったら泣くのは、本当に普通のことなのに、それがみっともないこと、なんて言われたら、いったいどうやって、感情を処理すればいいの?」

『南方署強行犯係 狼の寓話』 2003.10.31. 近藤史恵 徳間ノベルス 



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