酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年10月26日(日) 『都市伝説セピア』 朱川湊人

「フクロウ男」
 江戸川乱歩の世界を耽溺する男がインターネットに自分が作った情報を流す。フクロウ男が同胞を探して「ほうほうほう」と鳴くが、それに同じく返さなければ殺されると言うもの。最初は男が別人になりすまし、偽情報を流し続けるが、そのうち「フクロウ男を見た!」と同調する書き込みが増えてきた。してやったりとほくそえむ男。それだけでは満足できず、自らフクロウ男になり、殺人までおかしてしまい・・・。

 『都市伝説セピア』は、上記「フクロウ男」でオール讀物推理小説新人賞、日本ホラー小説大賞短編賞を連続受賞した朱川湊人(しゅかわみなと)さんのホラー短編集です。この「フクロウ男」は、かつて全国に流布した「口裂け女」や「人面犬」「トイレの花子さん」などの都市伝説を彷彿とさせます。主人公の男が物語の中で、孤独ゆえに殺人に至ります。出逢った友人との淡い恋情とも友情とも取れる感情がますます彼の孤独を浮き彫りにしていました。
 ほかの物語も、ただ怖いだけのホラーではなく、妖しく淫靡な世界が繰り広げられます。やはり江戸川乱歩の影響でしょうか。なかなか優れた短編集でした。オススメv

 まぁ、どんなに世界が変わっても、不思議なものや奇妙なものを求める人間の心は、なくなったりはしないんだね。

『都市伝説セピア』 2003.9.25. 朱川湊人 文藝春秋



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