酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年10月25日(土) |
『風紋』下 乃南アサ |
松永秀之の裁判がはじまった。松永は殺人を否認。・・・この逮捕は冤罪なのか? 母を殺害された真裕子たちと松永の妻・香織たちはまたもや世間の好奇の的となってしまう。松永の弁護士は自信満々で松永無罪を世に訴えかける。しかし、香織は松永を信じられなかった。子どもを実家に預け、酒と男に溺れひたすら墜ちていく香織。裁判の行方の結果、真裕子と香織を待ち受ける現実とはいったいどんなものなのだろうか?
殺された母親を慕う真裕子と、殺人者(?)を夫に持ってしまった香織。『風紋』も『晩鐘』も軸はこのふたりの女性だったのだとあらためて思います。香織はとても虚栄心が強いところがあり、もともと人格的に問題のある女性です。でも結婚相手が殺人犯にならなければ、彼女の転落はなかったのではないかと思います。 いずれにしても殺人という犯罪が、被害者の家族たちも加害者の家族たちも巻き込んで不幸を撒き散らすことに違いはありません。心ではその人に罪は無いとわかっていても、犯罪者の係累と関わりあいたくないという思いが私にもあります。そしてそういう見て見ぬふりや、関わらないでいようとする人々の本音がいつまでも不幸の連鎖を断ち切ってくれないのだと思いました。やはりかなり考えさせる物語です。オススメ。
「この一年間、俺たちがどんな思いで暮らしてきたか、誰より義姉さんが、分かってることだろう? 犯罪者の身内になるっていうことが、どういうことなのか、嫌っていうほど味わってきてるんじゃないか」
『風紋』下 1996.9.15. 乃南アサ 双葉社
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