酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年10月19日(日) |
『死んでも忘れない』 乃南アサ |
三人家族がいた。渉は15歳。学校ではたくみに‘ゲーム’にすり替えた“いじめ”がターゲットをころころ変えながら流行っていた。城戸崇は41歳。職場でもさらりと人気の男。しかし、かつて妻が浮気をして男に走ると言う痛手を負っている。絢子は35歳のもとキャリア・ウーマン。さっぱりとした性格で崇と結婚し、渉とも仲良くやっている。そんな再生して出来上がった家族に、絢子の妊娠とともにさまざまな嵐が吹きまくる。崇が満員電車で痴漢の汚名をかぶせられ、渉はいじめのターゲットにされてしまう。仲良くやっていた三人の絆に疑心暗鬼と言う疑いがとびかいはじめ・・・。
ほほう、タイトルの「死んでも忘れない」はそういうことを指していたのですか。これはまたやられましたな(笑)。私がタイトルから想像していた「死んでも忘れない」こととはまったく読みがはずれておりました。 普通に生活していた日常で突如降りかかる身に覚えのない災難。そしてその事件をきっかけに家族が互いを信じられなくなり、噂にふりまわされていく。なんとも読んでいて苦しい苦しい内容でした。それがありそうなことだったから、とてもリアル。噂する側にしてみれば<ほんとうのこと>なんてどうでもよく、よりスキャンダルでより過激であれば楽しいだけなのだな、と思います。無責任な噂が一人歩きをはじめ姿を変えてしまうのもそのためでしょう。 物語では最後の方にある人物が、三人家族に関わることによって三人家族が形を変えます。この流れに個人的にはどうだろう、と思ってしまいました。さすがに乃南さんも徹底した鬼畜な物語にはしかたくなかったのでしょうか。うーん残念v←私は鬼畜
どうせ、嫌な思いをするだけなのなら、「友情」とか「信頼」とか、学校の掲示板に貼られているような言葉が、ただのきれい事、見せかけに過ぎないと気付いてしまったら、学校など行く意味はないと思う。
『死んでも忘れない』 1999.10.25. 乃南アサ 新潮社文庫
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