酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年10月18日(土) 『幻日 DreamingDay』 高橋克彦

 いきなり恐ろしい夢解釈からはじまる。夢に隠された真実、少年時代に受けた衝撃、医者である父の恩恵にあずかりぬくぬくと生きてきた男。さまざまな記憶と思い出の短編集がある作家の過去を浮き彫りにする。

「鬼女の夢」
 鬼の形相をした叔母が弟を廊下へ引き摺り出していく夢を見た。あんなに大好きだった叔母なのに、どうしてこんな夢を見てしまったのだろう。その夢を解釈していくうちに、叔母の哀しい人生に思い当たる・・・。

 高橋克彦さんらしい記憶や思い出からなにかが浮き彫りにされる短編集です。しかしながら、なにかがいつもと違った趣。どうやらこれは高橋克彦さん自身の物語のようです。表題となっている「幻日」は、浮世絵研究に関する物語。浮世絵の研究が出版されることになるが、裏で親のバックアップがあったおかげだと知り己の無力さに愕然とする・・・。幻日の中で生きていた自分を思い知るのですね。せつなかったことだろうなぁ。華やかに活躍されている過去には陰となる部分があってこそと言うことなのでしょうか。

「主人が出てきて、離婚してくれって言うの。向こうの方に好きな人ができたんですって。駄目ですって、私言っちゃった。そっちに行って私が掛け合いますから、あなたが勝手に決めないでくださいって」

『幻日』 2003.10.20. 高橋克彦 小学館



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