酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年09月29日(月) 『ヨリックの饗宴』 五條瑛

 和久田耀ニは兄・栄一が好きだった。しかし兄は結婚を機に豹変。女房子どもに虐待を加える男になってしまった。そして突如失踪。7年が経ち、耀ニや残された家族たちは栄一のことを忘れたように振る舞い、やっと安定を手に入れたかのように見えた。そこへ市河と名乗る男から栄一宛にFAXが届く。そして耀ニは不思議な女に出会いこう告げられるのだった。「オズリックがヨリックに会いたがっているわ。そう伝えてちょうだい。いいわね、ヨリックによ」と。オズリックとはヨリックとはいったい誰なんだ? 切り離したはずの兄・栄一の気配とともに耀ニは大きな渦に巻き込まれていく・・・。

 ううう、うまいですねー。五條瑛さんv 奇想天外な破天荒な国家的物語でもさらりと料理して見せてくださる。今回は特に‘血’の濃さみたいなものをつきつめて見せられた気がしましたし、妙に納得してしまった。ハムレットをベースに進む展開もお洒落。私は五條瑛さん大好きだなぁ〜。

「歳を取ると、そういうことを考えるようになるの。自分が生きて、誰かと出会って、何かをした証が欲しくなる。他の人にはどうでもいいことでも、自分にとっては驚くほど大事なことなのよ。それがないと寂しすぎるでしょう。ただ、周囲に流されただけの人生なんて」

『ヨリックの饗宴』 2003.9.15. 五條瑛 文藝春秋



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