酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEXpastwill


2003年09月17日(水) 『翳りゆく夏』 赤井三尋

 東西新聞社人事厚生局長の武藤誠一は、社長に呼び出される。内定を出した女子学生が、20年前の誘拐犯の娘であることがスクープですっぱぬかれたのだ。武藤は興信所からその報告を受けていたが、女子学生の優秀さを認め、その過去を握りつぶしていた。このスキャンダルを払拭すべく、窓際へ追いやられている昔の事件記者・梶が過去の事件を洗いなおすことになる。優秀な梶の掘り下げ取材から辿り着いた驚愕の真実とは・・・。

 20年前の事件を追いかける作業というのは、現実には難しいことでしょうね。でもこの物語を素直に読んでいくと、ぐいぐい惹きつけられます。文章に派手さはないけれど、根底にながれる作者のやさしさみたいなものを感じるからかしら。
 ひとつの事件があって、それには多くの人とその家族がかかわっている。それがよくわかります。そして丁寧に針巡らされた伏線の集約はお見事。運命のいたずらにあっと言わされるに違いありませんわv

 わたしはよくいいますのよ、目の見えない人の不自由さは目を閉じただけでは分からないって。気持ちも同じだと思いますわ。

『翳りゆく夏』 2003.8.7. 赤井三尋 講談社



酔子へろり |酔陽亭酔客BAR
enpitu