酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年09月13日(土) 『哀愁的東京』 重松清

 40歳になった進藤は、フリーライター。かつて絵本で賞を取ったこともあったが、今はまったく描けないでいる。フリーライターの仕事を通してさまざまな出会いと別れを繰り返す進藤。自分の哀しみも他人の苦しみも見つめ心のうちで昇華していくうちに、進藤はおとなのための絵本を描ける気がしてくるのだった。

 『疾走』で、新しい重松清さんの一面を経験したあとだけに、やはりいつもながらの切っても切っても金太郎飴な重松清節に安心して身をゆだねることができました。40歳の進藤は、過去にも現在にも宿題を抱えたまま生きています。目をそらし、見ないふりをしながら流されていた進藤が、彼のかつての作品にかかわる人々と出会うことで癒され、立ち直っていきます。勿論、いつものごとく決してHappyEndではありませんが、少しだけ清々しい前向きな気持ちになれる、そんな物語でした。

「本がひとを呼ぶっていうの、あるんですよ」シマちゃんが言った。「読者と本の間に運命の赤い糸が結ばれてること、あるんです、絶対」

『哀愁的東京』 2003.8.25. 重松清 光文社



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