酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年09月09日(火) 『ワイルド・ソウル』 垣根涼介

 1961年、日本政府はブラジル移民希望者を募った。日本政府が謳うブラジルはまさにこの世の楽園のようだった。せせこましい日本から脱出し、地平線まで広がる緑の大地を耕し、大農場を持てる! 希望を胸に旅立った誰もがその夢を信じた。しかし、辿り着いた先は想像を絶する地獄だった。ジャングルに放り出され、病に斃れ、野垂れ死ぬ者たちが続出。移民計画は日本政府が行った口減らしに過ぎなかったのだ。
 それから40数年後、日本国へ復讐をするために4人の男たちが行動を開始した。親を愛する人を自分の人生を日本政府に奪い取られた男たちだった。その男たちの計画に巻き込まれてしまう女、報道マンとして行き詰まっていた貴子を待ち受ける結末は?

 うおーっ。叫んでしまうわ。すごい筆力で読ませる。ううーん、今年はホント当たり年かもしれないなぁ。もうぐいぐい引きずり込まれて読了しましたv
 日本政府がかつて行った移民計画がどういうものだったのかを垣間見ることができます。それでも生き抜いた奴らがいた。のほほんとぬくぬくだらだら生きている日本に報復を考えるのも当然な生き地獄を味わった彼ら。はぁ・・・。
 ケリをつけなければならない過去に、自分の範囲で納得できた時、また新しい人生が幕を開ける。考えさせられながら、笑えて、感心させられて、すっごくおもしろかったです。ケイと貴子がすっごくいいんだよなぁ。いやらしくて(笑)v

 もう、過去に縛られる必要はない。
 おれは発見した。ようやく気付いた。
 他人のせいではない。すべては自分のせいだー。
 色褪せた現実も、憂鬱だった過去も、その原因はすべて心の内にある。奥底に巣食う自己への恐怖にある。
 もう、自分を壊すことを懼れてはいない。

『ワイルド・ソウル』 2003.8.25. 垣根涼介 幻冬舎



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