酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年09月08日(月) 『いきはよいよいかえりはこわい』 鎌田敏夫

 行きつけの居酒屋で由紀江は顔馴染みのアルバイトタカシから、格安のマンション情報を耳にする。広告代理店に勤める由紀江は、すこしでも時間が欲しかった。そのマンションならば通勤時間は短縮され、家賃も格安だった。ただし、その部屋ではかつて殺人事件があったと言う。犯人は捕まっていることから、ドライに割り切り借りることにした由紀江は部屋のオーナーから不思議な忠告を受ける。それは部屋に鏡を置かないことだった・・・。

 気軽なホラーだとばかり思い読んでみたら、過去の悲しい出来事や男と女の深い関係などが浮き彫りになってきてちょっと意外でした。女性の‘性’については、男性と女性ではまったく感じ方考え方がまだまだ違うのかもしれないなぁ。受け入れる形の‘性’というのは、ややこしいもんです。まったく。

「昔は、娼婦というのは、選ばれたものの職業だったんだ。日本でも、ヨーロッパでも。それが、墜落した職業として見られるようになったのは。貨幣経済が中心になった近代になってからなんだよ。お金を媒介にして物を売る。そのシステムが発達して、女の肉体がお金で買えるものになってから、みんな軽蔑するようになった。おれたちは、お金というものを大事だと思っているくせに、お金で買えるものを、どこかで軽蔑しているところがあるからね」

『いきはよいよいかえりはこわい』2001.12.18. 鎌田敏夫 ハルキ・ホラー文庫 



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