酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年08月29日(金) 『紫迷宮』 明野照葉ほか

 女性作家ミステリー・アンソロジー迷宮シリーズの‘紫’。近藤史恵さん・松尾由美さん・新津きよみさん・黒崎緑さん・篠田節子さんなどなど豪華女性作家陣の夢の共演v どの作品もそれぞれ面白いのですが、贔屓の作家さんのひとり明野照葉さんの作品は秀逸でございました。

「かっぱタクシー」 明野照葉
 市橋は68歳の個人タクシー運転手。相性は「タロさん」。河太郎の太郎だ。市橋のタクシーには妻のすすめでカッパの絵が描いてある。そこから短くなり「タロさん」に落ち着いた。胃潰瘍で入院し、タクシー家業からも足を洗いたいところだが、訳あってやめるにやめられず毎晩タクシーを転がしている。それはどうしても乗せなければならない客を探して乗せるためだった。
 その客が問わず語りに聞かせる過去の恨みつらみにタロさんの胃はますます痛くなるのであった。そしてある夜、その客はとんでもない過去を語りだす。それは客の妄想なのか。真実なのか・・・。

 短編でここまでうまく運ばれてしまうと、ははーっ参りましたvと言いたくなります。人間の心に巣食う魔の恐ろしさをまざまざと見せ付けてくれるホラーです。

「うじうじ考えてみたところでしょうがない。人間、明日死んじゃうかもわからないんだしさ」 

『紫迷宮』 2002.12.20. 詳伝社



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