酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年08月25日(月) 『3way Waltz』 五條瑛

 悲劇の主人公なんてゴメンだ・・・そう思って17歳の神田恭祐は、16年前に起こった飛行機事故の慰霊祭に参列しなかった。502名が犠牲となり、その中に母親涼子も含まれていた。
 同じ頃、朝鮮民主主義人民共和国の工作員・由沙が金清日特別列車から失踪した。由沙の失踪で防衛庁・三号庁舎・米国防総省情報部極東支部が動き始める。
 そして恭祐の周りで次々と事件が発生。父が何者かに殺されてしまう。父が愛し、頑なに口を閉ざしてきた母・涼子はなぜ死ななければならなかったのか。ある日突然恭祐のもとに現れた暴力的な由沙とはいったい何者なのか。
 極東、日本という名の小さな島国のホールで、ダンス・パーティ=諜報戦が始まった。日本、米国、北朝鮮・・・三つ巴の諜報戦(スリーウェイ・ワルツ)の結末は。恭祐の生きる道は・・・。

 昨日、24時間テレビで北朝鮮に拉致された地村さんのお父様の戦いの日々を目にして泣けました。たまたま読んでいた物語が、まさに北朝鮮と日本の物語。過去から現在。そして今から未来へ。この妙なパーティに終わりが来るとよいのですが。
 物語は文句なく面白いです。五條瑛さんのスケールの大きさに身をゆだねて物語を彷徨うとあっと言う間に感動のエンディングへ。由沙という過激なおねぇさん(笑)に出会って変わっていく恭祐に幸あれ。

「あんたは、自分の生き方を自分で決めることができるのよ。暮らしていく国、仕事、愛する人間、全部あんたが自分で選べる。それがどんなに幸福なことか、あんたには実感などないんでしょうけどね。いずれ分かる。しっかり考えて、後悔しない道を行くことね。涼子はそれを心底望んでいたから」

『3way Waltz』 2003.7.30. 五條瑛 祥伝社 



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