酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年08月23日(土) 『ハーツ 死に抜けゲーム』 久綱さざれ

 片坂は、友人・沖野とともに何年も‘眠り病’に伏せっている倉衣亜沙美の見舞いに行き1枚のトランプを目にする。にんまりと笑ったピエロのジョーカー。それにはこんな文字が。<ハーツせんよう 結花>と・・・。それを目にした者たちにはみんな同じ夢に迷い込んでしまう。その赤い悪夢から逃れるには夢の中でハーツをして勝つことだけ。負けると死んでしまう。眠ると何度でも同じ夢に迷い込む片坂と沖野。ふたりは覚醒している時間に隠されたトランプの謎にせまる。ふたりが辿り着いた事実には恐るべき過去の出来事が・・・。

 トランプにこめられた想いが怨念となり、人々を巻き込んでいく。悪意のある人物は他者を巻き込もうとインターネットで公表。そして爆発的に増殖する悪夢の連鎖。ホラーにもハイテクが進出してきたものです。この物語の悲しさは不妊を悩む夫婦の悲劇に端を発しているところ。どんなにハイテクが進出してきてもホラーの根っこには人間の感情が起因しているんだなぁ。魅力的な人物も登場し、なかなか面白い物語でした。

 真実を量るもの差しは人間によって変わる。絶対的な正義など、どこにもない。この世に存在するのは、ただ、幸福や救いを求めて右往左往し、懸命に努力する人間の営みだけ・・・・・・。

『ハーツ 死に抜けゲーム』 2003.8.8. 久綱さざれ 学研研究社 



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