酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年08月22日(金) 『黒い春』 山田宗樹

 古い棺の蓋を開けたとき、禍々しい疫病の胞子が飛び散ってしまった。日本をパニックに陥れる黒手病。その胞子はいったいどこから飛翔してきたのか。感染者は助かることができるのか・・・。

 ううーん、山田宗樹さんがすごいと思う。『嫌われ松子の一生』、『直線の死角』、そしてこの『黒い春』で山田宗樹作品三冊目を読んだことになります。三作品ともまったく切り口が違うのです。まずこの幅広さに驚いてしまうなぁ。
 この『黒い春』は、パニック小説と歴史ミステリーとヒューマンドラマがうまくミックスされていました。
 個人的に今だからこそこれはホラーでもあると思ってしまいました。なぜならばこの物語が世に出た時にはサーズという病気が蔓延する前だったからです。この物語での黒手病の恐怖はサーズパニックを思わせました。恐ろしい・・・。
 愛する人が手立てもなく死んでいく。その苦しみや恐怖たるやおぞましいほどでした。ラストのあたりでは号泣してましたもの。生きるって愛するって尊いことなんだわ。しみじみ。

 ・・・・・人間は、死ぬものなのだ。
 当たり前のことに、いまさらながらに気が付いた。
 いま生きている人間も、必ず死ぬ時が来る。その瞬間がいつ来るのか、五〇年後か、あるいは五分後か、誰にもわからない。逆に言えば、いつ死んでも不思議ではない。それが生命というものなのだ。

『黒い春』 2002.3.10. 山田宗樹 角川書店



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