酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年08月20日(水) 『疾走』 重松清

 シュウジが生まれた片田舎は、リゾート開発の波に乗り、賑わっていた。兄、シュウイチは両親の自慢の長男。出来がよく進学校に進む。しかし、兄の様子がおかしくなってしまう。成績優秀だった兄も進学校では埋没してしまい、プライドが傷つきどんどんと引きこもってしまい、ついには赤犬になってしまった・・・。兄弟が、犯罪者となってしまったことでシュウジの人生は狂っていく。兄の罪をまともに受け止めることのできない父と母。いじめや差別が容赦なくシュウジだけに降りかかっていく・・・。

 重松清さんが、とんでもない物語を書きました。読む前から‘救いがない’と聞いていましたが・・・うーん(悩)。重松清さんの物語というのは、結局いつだって救いがあるわけではない、と私は思っています。ただ頑張ってみようと思えるなにかに主人公たちが気づくために、切っても切っても金太郎飴のような重松清ストーリーではありました。
 今回のように、ほんの14〜15歳の少年に重すぎる宿命を背負わせ、最期まで走らせることは確かに今までになかった物語です。読後感は涙とともにひたすら悲しかった。シュウジがこんなにもいい子でなかったならば、こういう涙あふるるラストではなかったわけだし、シュウジが少年ながらもできた人間性だったからこそ、あそこまでもがき苦しんだのだろうし。
 シュウジの両親や周りの大人がひどかった。巡り合わせと言えばそれまでなのかもしれないけれど、シュウジに孤独感を与え続けたおとなには憤りを感じます。
 えーっと、正直うまく感想が書けません。完敗。

「言葉が、あなたをつなぎ止めてくれます。聖書には、にんげんをこの世界につなぎ止めてくれる言葉が、たくさんあります」

『疾走』 2003.8.1. 重松清 角川書店



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