酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年08月12日(火) 『透明人間の納屋』 島田荘司

 ヨウイチは、日本海にある海べりの町に住んでいる。聡明なヨウイチはお隣の真鍋印刷の真鍋さんが大好き。博学でヨウイチに限りない愛情を注いでくれる大人の男の人だから。ヨウイチにはおかぁさんしかいないから。真鍋さんが透明人間はこの世に存在すると教えてくれた。人間を透明にする薬もあるそうだ。そしてある日ヨウイチの周辺で不可解な誘拐事件が発生。密室から女性が消失したのだ! これが透明人間による犯行だと考えると謎は解けるのだけれど・・・。

 今、巷で話題のジュヴナイル『ミステリーランド』の第一回配本の一冊です。宝物を入れるような箱も素敵。この島田荘司さんの本は、ものがたりのポイントの手が丸窓からのぞいています。
 島田荘司さんが書くと、ジュヴナイルと言えども、こうくるのかぁ〜とうなってしまいました。おとなが読むによく、子供には少々過激かもしれません。でもこの世界を知っておいて欲しいなと思うのも本心です。
 このタイトルにもなっている《透明人間》の存在と意味に気づく瞬間、悲しくて恐ろしくて涙が出ます。これが現実なのですよね。女性が消失する謎解きのトリックを取り正すよりも、その人たちの人生を思って欲しいですね。悲しい悲しい読後感でした。でも私はこの物語好きですv

「そう、天動説だ。でも真実は、迫害された地動説の方だった。これはとっても大事なことだ。物事はね、見る角度を変えれば別の面が見えてくる。そしてみんながこっちは違うぞと言いそうなら、たいていそっちが真実なんだ。考え方を反対にすれば、ただ裏側ってだけじゃない、別の顔が見えてくるんだよ。」

『透明人間の納屋』 2003.7.31. 島田荘司 講談社 



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