酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEXpastwill


2003年08月03日(日) 『十四歳、ルシフェル』 中島望

 源正義、十四歳。女の子に間違えられる容貌の少年である。幼馴染で美しく聡明な山鹿百合子と密かに交換日記をしている。百合子に思いを寄せる不良少年、車田軍司に恨まれ、いじめられている。ある日、正義は百合子の祖父に会いに行った帰り道、車田たち暴走族に襲われる。目の前で百合子を輪姦され、守ることすらできずズタボロにされ殺されてしまった正義。しかし、正義は百合子の祖父の実験材料となり、この世にふたたび甦ってきたのである・・・。

 ‘ルシフェル’と言う単語に惹かれ、手にした小説です。人造人間もの、サイボーグもの、復讐ものです。十四歳という心も身体も子供と大人の端境期にある少年が殺され、四年後には最強の戦士として甦り、愛した人のために殺戮を繰り返します。読みやすいし、漫画ちっくなのですが、物語を通して<哀しみ>が漂っています。罪と罰。年齢によって裁かれることのない年若い犯罪者たち。ライトノベルス感覚で読み流せないテーマがぎっしり詰まっていました。考え込んでしまった。

「ご、ごめんなさい」少年が謝った。
「許してください。僕たち、まだ中学生なんです」
「おれだってそうさ」と正義。
「おまえらと同じで人の痛みがわからないから、なんだってできるんだよ」

『十四歳、ルシフェル』 2001.10.5. 中島望 講談社ノベルス



酔子へろり |酔陽亭酔客BAR
enpitu