酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年07月23日(水) 『ゴッホ殺人事件』 高橋克彦

 加納由梨子はパリで美術品修復家として働いている。東京で母親が自殺をしたと連絡が入り、急遽帰国。父の形見のミレー模写がなくなっており、貸し金庫からドイツ語で書かれたあるリストが出てきた。由梨子は母の死が自殺なのか不審に思う。オルセー美術館に勤める友人マーゴにリストを見せた時から、由梨子やマーゴの周辺があわただしくなる。リストから推察するとどうやらマーゴが立てた仮説のナチス押収品の中にゴッホ作品が存在しているらしい? そしてゴッホの拳銃自殺も殺人ではないかと思えてきた。悩める由梨子のもとへかつての恋人・塔馬双太郎がやってくる・・・。

 読んでいないと思いながら、読んでいると・・・読んでいました(苦笑)。道理で下巻に入ったあたりで全ての道筋がパァっと理解できたはずでした。
 塔馬双太郎が登場するのは下巻から。と言う事は上巻は双太郎が登場するための壮大な前フリな訳です。そこに手間隙かけたぶにだけ重厚な物語展開となっています。うますぎる・・・。ゴッホが自殺か他殺か。現実に起こった事件が自殺か他殺か。ふたつの事件が絡み合いながら解きほぐされていきます。すばらしい。

 興奮がこっちにまで伝わってきて、自分もこの目で確認したくなる。どんなに論理的で優れた論文でも、その気持ちがなければ駄目だ。

『ゴッホ殺人事件 上下』 2002.5.20. 高橋克彦 講談社



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