酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年07月21日(月) 『闇から覗く顔 ドールズ』 高橋克彦

 ※この作品は高橋克彦さんの『闇から来た少女 ドールズ』に続く物語です。ネタバレを含みますので、未読の方は是非先に『闇から来た少女 ドールズ』をお読みいただくことをオススメいたします。

 少女、月岡怜に転生した江戸時代の人形師・泉目吉。今回は名探偵目吉せんせーが4つの物語で現代人の心の闇に立ち向かう。
「紙の蜻蛉」
 創作折り紙の第一人者としてマダムに人気の高い華村研は、仙台の個展で来場客の拵えた蜻蛉に愕然とする。それは江戸や明治に流行った古典的な折り方だった。華村はその折り主に執着する。そして華村の周りでは不審死が数々見え隠れしていた・・・。
「お化け蝋燭」
 盛岡市商店街の温泉旅行に参加した恒一郎・香雪・怜、そして松室。日光江戸村の観光では怜の中の目吉せんせーが目覚めて大喜び。しかし夜の宴会の最中に幹事の安西という男が殺された・・・。
「鬼火」
 目吉せんせーの影響で怜の体に異変が起こり入院することになる。怜と同室になった女性は、子供たちのボランティア活動で有名な松永久枝。菩薩か天女かと言うほどのオーラで病院中から尊敬のまなざしを向けられる患者。だが、同室の怜だけは彼女を怖がり泣きじゃくる。怜の中の目吉せんせーは、怜を守るべく・・・。
「だまし絵」
 美しい絵を描き、霊能力者として名を馳せている西条晶緒。あるイベントの控え室で晶緒は愛する兄が少女に殺される予知夢を見る。そしてその会場にいる怜を見つけ、怜を敵として見做し、排除しようとする・・・。

 母への愛・初恋の男への同性愛・主人への愛・双子の兄への愛。4つの物語の軸はすべて愛です。そしてねじれたりひねくれたり愛が形を変えてしまい、それぞれが鬼を呼び出してしまう。目吉せんせーは優しく心に染み入る言葉で犯人たちの心の闇を救います。
 江戸時代の天才人形師、泉目吉が現代に甦る。少女の魂に・・・。目吉を愛する現代の仲間たちは目吉が消えてしまうことを心配するほどになっています。ただ目吉の影響で怜の体に異変が起こるなど、心優しい目吉せんせーには悩みがつきないと言ったところ。いい男です。泉目吉。

「だれの心にも鬼がいる。特に死と隣り合わせになっている病院じゃ、鬼が出たって・・・・・・」

『闇から覗く顔 ドールズ』 高橋克彦 中公文庫 



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