酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年06月10日(火) アンクルトムズ・ケビンの幽霊 池永陽

 西原章之は勤め先の鋳物工場の社長から、タイ人のチャヤンらを入管に密告し、彼らの給料を未払いのまま強制送還する段取りを迫られていた。西原の少年時代は鉱山暮らしの貧しいものだった。その時の初恋の相手、スーインは朝鮮人であるために日本人から手ひどい差別を受けていた。その苦い思い出から、西原はチャヤンたちを見捨てることができない。西原は社長とチャヤンたちの板ばさみになる・・・。

 人が人を差別する。それがどんなに情けない愚かな行為であるかを知りながら、やはり人は人を差別して生きている。平等だと声だかに訴えてみたところで、人の心に根付いた偏見はなくならない。
 こういう日本人が朝鮮人をタイ人を極度に差別する物語は、読んでいて泣けてくる。それでも現実に起こっていること。作者の池永陽さんは『コンビニ・ララバイ』で泣かせてくれましたが、この物語も心がきしむほど泣けました。できるならば自分が人を差別しないでいられますように。自信はありませんが、心がけて生きていきたいと思いました。
 この物語にチャヤンとフウコと言うふたりの若者が登場します。自分が何者であるかを問いながら生きているふたりです。こういう若者がいいな。たらたら甘えていない。尊敬できる。

 人間は、弱すぎるものに対しては思い切り残酷になれる本能を生まれながらにして持っているのかもしれない。

『アンクルトムズ・ケビンの幽霊』 2003.5.5. 池永陽 角川書店



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