タマサボテンを絞った水を飲み、 ヤドリギの実を食べる毎日。 キャラバンの連中は、皆それに慣れていた。 しかし子供達は魚介類の味を懐かしがった。 リアラは残り僅かな乾し貝を与えた。
紅粉鳥が弱ってきた。 熱帯性の生きものとはいえ、ここは暑すぎる。 陽光を遮る物は鉄塔とトライホイールのみだ。 日中は体力温存の為、クーラーの効いた車内でゴロゴロ過す。 夕刻になってから、皆で虫ガラ拾いを始める。
今日も子供達とリアラは仕事を手伝う。 だいぶ手馴れてきた。 カーゴに詰めこんだ羽根や足が満杯になった頃、 “それ”は突然襲ってきた。 夕焼けに染まった西空から、巨大な黒い影が飛んで来た。 いち、に、…3羽のヘビコウモリ。 危ない。
ヘビコウモリはムシトリサボテンに捕らえられたまだ生きている虫を、 横取りに来るハイエナだ。時に人間をも襲う。 虫拾いの連中は、20mm機関砲でやつらを追い払う。
パパパパパッ!
鉄塔の周囲を滑空する。
パパパパパパパパッ!
今度は手応えが有った。 木の葉の様にくるりと舞い落ちる3匹の巨体。 ドサリとサボテンの群生に落下。 無数の穴から流れる血でサボテンが真っ赤に染まった。
虫拾いの若者が親指を立ててニヤリとした。 子供達は怯えた。 リアラは丘の深部での生活の恐ろしさを改めて知った。
その晩、食卓を飾った大きな肉魂は子供らを喜ばせた。 ヤドリギの実の淡白な味に飽きていたリアラも、 複雑な心境でそれを食した。 生きるとはきっとこういうことなのだろう。
つづく
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